天使はなぜ堕落するのか

以前、新聞の書評で目にして、その魅力的なタイトルが気になっていた本。

著者の八木雄二という人に関する予備知識は皆無であり、単にキリスト教のお勉強の一環として購入した訳であるが、実際は、“中世哲学の興亡”というサブタイトルが付けられていることからも明らかなように、アウグスティヌスに始まりオッカムに終わるという中世哲学の変遷について書かれた本であった。

まあ、キリスト教が絶対的な権威を有していた中世のお話なので、特に前半ではキリスト教に絡んだ話題も多いのだが、後半になって著者の専門でもあるドゥンス・スコトゥスというフランシスコ会学派の神学者が登場すると、認識論というのかなあ、個人的にあまり興味の湧かないテーマが中心になってしまうため、正直、読み進めるのにかなり苦労した。

しかし、“オッカムの剃刀”でも有名なあのオッカムが、知性だけでなく、感覚の重要性を認めたことからギリシャ以来の自然哲学が消滅した、というような、まあ、専門の方には当然の話なのかもしれないが、俺にとっては非常に興味深い指摘も随所に見ることができ、機会があれば、数年後、もう一度最初から読み直してみたいと思う。

ということで、本書に登場する哲学者、神学者のうち俺が知っていたのはアウグスティヌストマス・アクィナスくらい。暗黒の時代と考えられていた中世を再評価しようという動きはかなり前から活発になっている訳であるが、今の学生さんはスコトゥスやアンセルムス、アベラール、オリヴィといった人のことも勉強するのでしょうか。