1952年作品
監督 チャールズ・ヴィダー 出演 ダニー・ケイ、ジジ・ジャンメール
(あらすじ)
靴屋のアンデルセン(ダニー・ケイ)は、自作の物語を子どもたちに話して聞かせるのが大の得意だったが、あまりの人気にそれが学校の勉強の妨げになると考えた校長の怒りを買ってしまう。気を利かした使用人ピーターの勧めにより、アンデルセンは故郷を離れ、コペンハーゲンへやってくるが、到着早々、ひょんなことからバレリーナのドロ(ジジ・ジャンメール)のトゥシューズの修理を依頼される....
童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが主人公のミュージカル作品であるが、伝記ではないとのこと。
Wikipediaによると、アンデルセンが生まれたのはデンマークのフュン島ということで、本作でも彼がコペンハーゲンに行くときにはちゃんと船を利用しているのだが、実際に靴屋だったのは彼の父親の方であり、彼自身は14歳のときにオペラ歌手になることを夢見てコペンハーゲンに出てきたらしい。
したがって、本作で描かれるバレリーナのドロとの淡い恋も、当然、創作なんだろうが、それにしては随分と酷な結末になっており、あれではアンデルセンに対して“大人の恋愛は無理”と言っているようなもの。まあ、実際、アンデルセンは生涯独身だったそうであり、そんな“史実”が反映しているのかもしれないが、せめて映画の中ではもっとロマンチックな経験をさせてあげたかったような気もする。
また、ダニー・ケイ主演作品の場合、彼の個人芸を披露するためにストーリーが中断されてしまうことが少なくないのだが、今回もほとんどストーリーと関係のない人魚姫のバレエが映画のクライマックスになっており、しかも、この間、ダニー・ケイの出番は一度もない。まあ、このバレエ自体は悪くないのだが、脚本上、もう少し工夫が必要だったろう。
一方、そのクライマックスを任されたドロ役のジジ・ジャンメールは公開当時28歳で、本作が映画デビュー作らしいのだが、年齢よりも老けて見えるのが残念。本作でも振付けを担当しているローラン・プティの奥さんだそうだが、ここは無難にモイラ・シアラーを起用しておくべきだったと思う。
ということで、いくつか欠点は見られるものの、明るく、美しい映像とダニー・ケイの歌う親しみやすい曲のお陰もあって、全体的にはとても楽しい作品に仕上がっている。芸術性ではマイケル・パウエルの「赤い靴(1948)」に遠く及ばないが、決して嫌いな作品ではありません。