ヒット・パレード

1948年作品
監督 ハワード・ホークス 出演 ダニー・ケイ、ヴァージニア・メイヨ
(あらすじ)
フリスビー教授(ダニー・ケイ)は、同僚たちと一緒にニューヨークにあるトッテン音楽院にこもりっきりで音楽史の編纂作業に没頭していた。ある日、窓掃除人から世間ではジャズが流行っているという話を聞いた彼は、ジャズ・クラブで出会った歌手のハニー(ヴァージニア・メイヨ)を研究のために音楽院に招待するが、ギャングの情夫が検察に追われていることを知った彼女は、その誘いに乗ったふりをして音楽院へ逃げ込む….


名作コメディ「教授と美女(1941年)」をハワード・ホークス自らがリメイクした作品。ずーっと以前、TVの深夜放送でズタズタに編集されたものを見た記憶がある。

おおよそのストーリーは前作と同じなんだけど、主人公の研究テーマが、前作の百科事典から音楽史に変更されているため、研究材料としてトミー・ドーシー、ルイ・アームストロングライオネル・ハンプトン、メル・パウエルといった当時のジャズ界を代表する錚々たるメンバーが自身の役として出演しているのがとても嬉しい。

さらに、フリスビー教授の同僚の役で御大ベニー・グッドマンが俳優として出演しており、ジャズの生い立ちをテーマにして、彼等がドボルザークの“家路”のメロディーにのせて一大ジャムセッションを繰り広げるシーンは本作の最大の見どころの一つになっている。

しかし、大変残念なことにこういった演奏シーンは決して多いとは言えず、その上、歌や踊りで主演のダニー・ケイの出番が一切無いというのはどういうことなのか全く理解に苦しむ。ヴァージニア・メイヨでさえ(多分吹き替えだと思うが)2曲も歌わせてもらっているのにねえ。

まあ、ダニー・ケイのそれまでの主演作品を見てみると、彼の個人芸を披露するために作品のスムーズな展開を犠牲にしてしまっている例が少なからず存在しており、流れるような演出を得意とするホークスがそれを嫌ったせいなのかも知れないのだが、後の「5つの銅貨(1959年)」におけるサッチモとの掛合いシーンなんかを思い出すと誠に勿体ない限り。

ということで、監督から脚本(=ビリー・ワイルダー)、主演、ゲストに至るまで、まるで夢のようなメンバーが揃った作品であり、見ているだけでとても幸せな気分にしてくれる。これで、一曲でも良いから、一流ジャズマンの演奏をバックにダニー・ケイが歌うシーンがあったら最高だったのになあと思わずにはいられません。