1998年作品
監督 トニー・ケイ 出演 エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング
（あらすじ）
消防士だった父を黒人に殺された恨みから、有色人種の排斥を唱える白人至上主義グループのメンバーになったデレク（エドワード・ノートン）。車を盗もうとした３人の黒人青年を惨殺した罪で刑務所送りになった彼は、ようやく３年の刑期を終えて出所してくるが、彼を崇拝する弟のダニー（エドワード・ファーロング）が同じグループに加入したことを知って複雑な表情を浮かべる….
エドワード・ノートンが「ファイト・クラブ（1999年）」の前年に主演した作品。
刑務所内でのある経験が契機となって、自分の白人至上主義的な考えが間違いだったことに気付いたデレクは、出所後、グループの本拠地を訪れ、そこに居たリーダーを殴り倒してグループを脱会。しかし、その事件がきっかけとなって人種間の対立が一層激化してしまい、彼の弟のダニーが黒人少年によって学校のトイレ内で射殺されるという非常に後味の悪いエピソードで本作は幕を閉じる。
その後のデレクの行動が一切描かれていないため、本作のメッセージは明らかではないのだが、いくら彼が元々優秀な学生だったとはいえ、あのような状況において、彼に両者の対立を沈静化するための仲介役を期待するのは、土台無理な話。彼に出来るのは、せいぜい残った家族を連れてこっそりと町を脱出するくらいのものだろう。
そのことから推測すると、まあ、この件に関しては将来的にもあまり希望は持てないというのが本作の結論のようであり、それに対しては何らかの反論を試みたいところであるが、我が国の状況を見ても、本作が公開された15年前よりも事態は悪化している印象であり、本作の結論の正しさを渋々ながら認めざるを得ないというのが残念なところ。
主演のエドワード・ノートンは、本作でもお得意の“なりきり”演技を披露してくれており、特に車泥棒の黒人を惨殺するときの鬼気迫る演技は文句なしに素晴らしいのだが、全体のバランスを考えた場合、少々やり過ぎの感も無きにしも非ずであり、正直、あの“狂人”と更生後の人物が同一人物とはなかなか思えなかった。
ということで、少数派への公的な支援に対して過剰な反発を示すのが、必ずしも多数派の中の勝者ではなく、むしろ敗者に近い側の人間であるというのは洋の東西を問わない悲しい事実であり、おそらく、それによって自らの脆弱なプライドが維持できなくなることを（無意識のうちに？）恐れているからなのでしょう。
