暗夜行路

柄谷行人お勧め(?)の志賀直哉の名作。

半分以上“お勉強”のつもりで読んでみたのだが、どうしてどうしてとても面白い作品なので、正直、驚いた。ストーリー展開もスピィーディーであり、寝る前に布団の中で読んでいると、かえって目が冴えてきてしまうくらい。

屋根に上って母親に叱られるシーンや「豊年だ、豊年だ」のシーン等、これまでそうと知らずに目にしていた文章が沢山含まれていたのも名作の所以であり、ジャンルとしては俺のあまり得意でないドロドロ系ではあるものの、主人公のストイックな心根に助けられて最後まで気持ちよく読み通すことが出来た。

また、“小説の神様”と言われるだけあって、簡潔明瞭な文章はとても読みやすい。結構複雑そうな情景描写がいとも簡単に書かれているあたりはうらやましい限りであり、それこそ書けないシーンなんて何も無いっていう感じ。これだけのテクニックがあれば、エッセイなんかはまさにお手の物だったんだろうなあ。

ということで、志賀直哉の別の作品も読んでみようと思ったのだが、残念なことに彼の残した長編はこれ一つだけ。本書と一部共通したテーマを持つ中編「和解」が比較的ボリュームがありそうなので、とりあえず次はこれにしてみようかと思います。