ダイアローグ

「反文学論」だけではボリューム的に少々物足りなかった故、その下に積んであった柄谷行人の対談集を読んでみることにした。

こちらは“1979年6月22日 初版第一刷発行”となっており、対談相手は、蓮實重彦中上健次安岡章太郎岸田秀廣松渉樺山紘一長尾龍一といった面々。おそらく、当時、たま〜に読んでいた「現代思想」に掲載されたものをまとめたものと思われる。

当然、内容は相当ハイブローであるが、そのレベルは対談相手によって乱高下し、中上や安岡、岸田が相手のときは比較的理解しやすいものの、蓮實相手になるとにわかに難易度は上昇し、廣松相手に至ってはほとんど理解不能。少々気は滅入るものの、対談相手からも“そこのところは理解できない”というセリフが度々洩らされるので、まあ、解らないのは俺だけではないらしい。

目次を見て一番楽しみにしていたのは、樺山&長尾との「現代日本の思想」だったのだが、柄谷のやや暴走気味とも思える議論展開によって途中からマルクスヘーゲル、終いにはキリスト教の話になってしまったのが残念。丸山真男に対する批判も“エクリチュールが抜けている”というだけではとても納得できないし、そもそも彼等の考える“思想”とはどんなものなのか、もっと詳しく説明して欲しかった。

ということで、当面、柄谷行人はもういいやという心境なのだが、いくつかの対談で志賀直哉の「暗夜行路」の話題が出てくるのが気になった。例によって、俺はこれまで読んだことがなく、今さら手を出すのに少々気恥しい思いがしないではないが、どこが凄いのかちょっと読んでみようと思います。