黙秘

1995年作品
監督 テイラー・ハックフォード 出演 キャシー・ベイツジェニファー・ジェイソン・リー
(あらすじ)
米国メイン州の離島にある屋敷で、富豪の未亡人が階段から転落死する事件が発生。殺人の疑いをかけられたのは、家政婦のドロレス(キャシー・ベイツ)であり、事件発生時、血だらけで横たわる女主人の頭に“のし棒”を振り下ろそうとしている姿を郵便配達人に目撃されていた。何者かからのFAXにより事件を知ったドロレスの娘セリーナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)は、数年ぶりに島へ帰ってくるが….


スティーヴン・キング原作によるミステリイ映画。

といっても、本作を見てみようと思った動機は、最近、DVDで見た「フライド・グリーン・トマト(1991年)」と「カンザス・シティ(1996年)」という作品で、それぞれ魅力的な演技をみせてくれた女優さん二人が、たまたま本作で共演しているのを知ったからであり、決して怖い映画を見ようと思った訳ではない。

実際、ホラー映画的な描写は、女主人が階段から転落死する冒頭部分だけに限られており、それ以降はどちらかというとむしろ抑制された陰鬱な雰囲気が漂う作品になっている。実は、ドロレスには、20年前にも夫殺しの容疑で警察の取調べを受けたという過去があり、作中でも度々それに関する回想シーンが挿入されるのだが、過去の部分は比較的明るいトーンで描かれているため、見ていて混乱するようなことはない。

正直、謎解きの部分に工夫がみられないため、ミステリイとしてはかなり物足りないし、少なくとも、セリーナと亡き父親との間の“秘密”に関しては、終盤になって彼女自身が思い出すまで一切持ち出さない方が良かったような気もするが、登場人物がいずれも一癖ある人物ばかりなので、彼等の間の葛藤を眺めているだけでも十分に面白い。

そして、そんな中でも特に魅力的なのがキャシー・ベイツ扮する主人公ドロレスであり、(相変わらず、斧とは完全に縁が切れていないようであるが)世間の冷たい目に耐えながら娘セリーナに献身的な愛をそそぐ姿はなかなか感動的。そんな彼女に、“事故は不幸な女の最高の友だち”という親身なアドバイス(?)を送る女主人ヴェラのキャラクターも悪くない。

ということで、キャシー・ベイツ出世作といえば、同じスティーヴン・キング原作の「ミザリー(1990年)」になる訳であるが、小説では読んでいるものの、映画の方は未見のまんま。個人的に痛そうな作品は大の苦手なのだが、うーん、勇気を出して見てみようかなあ。