かいじゅうたちのいるところ

2009年作品
監督 スパイク・ジョーンズ 出演 マックス・レコーズ、キャサリン・キーナー
(あらすじ)
空想好きの少年マックス(マックス・レコーズ)は、母(キャサリン・キーナー)と姉との3人暮らし。ある日、母親にこっぴどく叱られた彼は、自分の感情がコントロールできなくなってしまい、彼女の肩に噛み付いた上、家を飛び出してしまう。そんな彼がボートに乗って辿り着いた島には奇妙な怪物たちが住んでおり、ふとしたはずみから彼は彼等の王様になることに….


モーリス・センダックの世界的に有名な絵本(=当然、俺は未読)の映画化。

子供向けのファンタジー映画だと思って油断して見ていたのだが、これがなかなか一筋縄ではいかない作品であった。まあ、ジム・ヘンソン工房が手がけたという“かいじゅう”のデザイン&表情が大変素晴らしい故、彼らが飛んだり跳ねたりする様を眺めているだけでも結構楽しいのだが、作中、大した事件が起きる訳でもないため、ストーリー的には相当物足りない。

そこで、大人向けには、「島に住んでいる“かいじゅう”(=英語では“Wild Things”)は、人間の原初的な“感情”を具現化したような存在であり、王様(=理性or知性)となったマックスは何とか彼等をコントロールしようと奮闘する」ってな具合に色々と深読みが出来るよう配慮されているのだと思うが、まあ、それが成功しているかどうかは結構微妙なところ。

見終わって思い直してみれば、マックスの分身的存在であるキャロルが怒りに任せてダグラスの羽を引きちぎるというショッキングなシーンは、マックスが母親の肩に噛み付いたエピソードと対応しているのだろうし、マックスが母親の元へ帰って行くというラストシーンは、自分の未熟さを悟った彼の精神的な成長を現しているのだと思うが、正直、見ているときにはなかなかそこまで頭が回らない。

ある意味、観客に対して必要以上に媚びることのない良心的な作品だと思うが、その反面、単なる失敗作と判断されてしまう危険性も高い訳であり、我が家のよく行く映画館で本作の上映期間があっというまに終わってしまったことも、この不安と決して無縁ではなかったのだろう。

ということで、監督のスパイク・ジョーンズは、あの「マルコヴィッチの穴(1999年)」で注目された訳であるが、まあ、こういった作風のせいか、寡作の人らしく、本作を含めて監督作品はまだ3本しかないとのこと。機会があれば、残る「アダプテーション(2002年)」も是非見てみたいと思います。