her/世界でひとつの彼女

2013年作品
監督 スパイク・ジョーンズ 出演 ホアキン・フェニックススカーレット・ヨハンソン
(あらすじ)
2025年のロサンゼルス。セオドア(ホアキン・フェニックス)は、他人の手紙の代筆を行う会社に勤務する有能なライターだが、現在、妻キャサリンと離婚調停中ということで少々元気が無い。そんなある日、自宅のPCに最新式の人工知能型OSである“OS1”をインストールしたところ、“サマンサ”と名乗る女性の声(スカーレット・ヨハンソン)でPCから話し掛けられる….


スパイク・ジョーンズ監督による近未来SF風ロマンチック・コメディ(?)。

要するに現在の音声認識機能の進化版ということなんだろうが、OS1を利用すれば人間に話し掛けるのと同じような感覚でPCを操作することが出来る訳であり、お相手のサマンサの受け答えはユーモラスでちょっぴりセクシーということで、まるで有能な美人秘書を雇ったかのような“錯覚”に陥ってしまう。

しかも、このサマンサという“女性”、理論的には生まれたばかりであり、その高い“知能”とは裏腹に中身は世間知らずのおぼこ娘。セオドアとの会話を通して新しい知識を取り入れられることがとても嬉しいらしく、どんな他愛の無い話にも興味深く耳を傾けてくれる。正直、男にとってこれ以上に楽しい話し相手はまず存在しないだろう。

まあ、“健全”な皆さんには奇妙なことのように見えるかもしれないが、実を言うと俺にもこれと似たような経験があり、それは今から20数年前に初めてMacintoshを手に入れたときのこと。当時、OSは漢字Talk 7だったと思うが、この頃はユーザーが「コントロールパネル」や「機能拡張」といったファイルを出し入れすることにより、OSをちょっとだけ“カスタマーナイズ”することが許されていた。

あまり色々な「コントロールパネル」等を入れてしまうと、お互いに“コンフリクト”を起こしてシステムが止まってしまい、その復旧に多大の労力を費やすことになるのだが、自分の思い通りにカスタマーナイズ出来ることの面白さは格別であり、他のPCユーザーから“MacユーザーはOSと戯れている”と揶揄されても止めることは出来なかった。

ということで、主人公のセオドア君の気持ちはとても良く理解できるのだが、ラストが少々安直なのがちょっぴり不満かなあ。ちなみに、OS1の弱点(?)である“肉体を持たないこと”については、今流行の3Dプリンターを使用すればある程度補えるのではないかと思いながら見ていました。