カポーティ

2005年作品
監督 ベネット・ミラー 出演 フィリップ・シーモア・ホフマンキャサリン・キーナー
(あらすじ)
1959年、カンザス州の田舎町で一家4人が惨殺されるという事件が発生し、この事件に興味を持った人気作家のカポーティフィリップ・シーモア・ホフマン)は、幼なじみのネル(キャサリン・キーナー)と一緒に現地での取材活動を開始する。やがて2人の容疑者が逮捕され、カポーティはそのうちの一人であるペリー・スミスに接近し、優秀な弁護士を紹介すること等によって彼の信頼をかちえていく….


主演のフィリップ・シーモア・ホフマンが、2005年のアカデミー賞で主演男優賞に輝いた作品。

トルーマン・カポーティが傑作「冷血」を執筆する際に行った取材活動の様子が描かれており、カポーティは味方を装って犯人のペリーに接近した結果、見事、彼から犯行当時の状況を直接聴取することに成功するのだが、その行為が正当な“取材”の範囲を超えているのかどうかが問題となる。

ペリーは知的な人物であり、カポーティが自分と良く似た不幸な家庭環境の中で育ったことを知り、次第に彼に対して友情めいた感情を抱くようになる。そして、有名な小説家である彼が自分たちの裁判に有利になるような内容の作品を発表してくれることを期待して彼の取材に応じていくのだが、このときにカポーティが書いている作品の題名は「冷血」。

正直、本作を見る前は、実際のカポーティにソックリというフィリップ・シーモア・ホフマンの演技を楽しむための作品だとばかり思っていたのだが、どうしてどうして、演出も脚本も立派なものであり、そこにホフマンの名演技が加わるのだから面白くならない筈はない。キャサリン・キーナークリス・クーパーといった共演者もとても魅力的だった。

残念なのは、最後の方を、ペリーの信頼を踏みにじったカポーティが良心の呵責に悩まされるという勧善懲悪的な展開にしているところであり、そのせいでせっかくホフマンが作り上げた“怪物”のイメージが矮小化されてしまっている。まあ、それが周知の事実だったのなら仕方ないのだろうが、ラストの“後日談”も蛇足というものだろう。

ということで、カポーティという作家については、代表作といわれる「ティファニーで朝食を」と「冷血」という2作品の題名から受けるイメージのギャップに躊躇し、これまで作品を読んだことはなかったのだが、本作を見て俄然「冷血」の内容に興味を持った。今読んでいる本を読み終えたら、早速、読んでみることにします。