2002年作品
監督 スパイク・ジョーンズ 出演 ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ
(あらすじ)
映画「マルコヴィッチの穴」の成功で、一躍有名になった脚本家のチャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)。そんな彼のもとへ、作家スーザン・オーリアン(メリル・ストリープ)の書いた「蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界」というノンフィクション作品の脚色という仕事が舞い込んでくるのだが、なかなか良いアイデアがまとまらず、彼自身の恋愛と同様、悪戦苦闘の日々が続くことに….
スパイク・ジョーンズ&チャーリー・カウフマンのコンビによるコメディ映画第2弾。
映画監督が主役の作品というと、フェリーニの「81/2(1963年)」やトリュフォーの「アメリカの夜(1973年)」といったところが有名であるが、本作の主役は脚本家。監督業務に比べると、どうしても仕事の中身が地味になってしまうため、やはり脚本家を目指している双子の弟のドナルドや原作者のスーザンといった興味深いキャラクターを登場させ、虚実入り混じったユニークなストーリーが展開していく。
前半は、チャーリーが脚本を書いている“現在”とスーザンの原作に書かれている“過去”とが平行して描かれ、そこにチャーリーの妄想が紛れ込んでくるというちょっと複雑な構成になっているのだが、それぞれのエピソードがきちんと整理されて描かれているため、見ていて混乱してしまうようなことはほとんどない。
後半になると、チャーリーが直接スーザンを訪ねるという展開になるため、ストーリーが一層錯綜することになるのかと思いきや、何とここからは突然ホラー映画のような単純なストーリーへと急旋回。このへんの緩急自在な使い分けというのは脚本家としての自信の表れでもあるんだろうが、もう、お見事としか言いようがない。
なお、見終ってから調べたところ、スーザン・オーリアンという作家も、彼女が書いた「蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界」という本も共に実在のものであったが、双子の弟であるドナルドの方はやはり架空のキャラクターとのこと。彼はおそらくチャーリーの無意識の願望の投影的存在であり、その死によってチャーリーが人間的に成長するというベタなハッピーエンドも本作のユニークなストーリーにピッタリだったと思う。
ということで、このコンビによるコメディ映画の第1弾である「マルコヴィッチの穴(1999年)」には、正直、そんなに面白かったという印象は残っていないのだが、本作の出来から考えると俺の方に問題があった可能性が高いため、そのうち見直してみたいと思います。