オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014年作品
監督 ダグ・ライマン 出演 トム・クルーズエミリー・ブラント
(あらすじ)
宇宙からの侵略者“ギタイ”の攻撃により、ヨーロッパ大陸のほとんどを占領されてしまった人類は、新型のパワードスーツを投入して反撃に転じようとしていた。そんなとき、上官の不興を買った広報担当のウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は一兵卒として最前線へ送られ、実戦経験が無いために最初の出撃であっけなく命を落としてしまうが、次の瞬間、時間を遡って出撃の前日に戻っていた….


桜坂洋という人の書いたライト・ノベルが原作になったハリウッド製SF映画

戦死しては出撃の前日に戻るというパターンはその後も何度となく繰り返されるのだが、それによって徐々に実戦経験を積んでいった主人公はいつしか卓越した戦闘能力を有する勇者へと変貌し、過去に同じ体験をしていた女性戦士のリタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)の協力を得て遂にギタイの殲滅に成功する、というのが本作のあらすじ。

まあ、ビートルズの曲名を意識したらしい邦題からしてパクリ感満載であり、ストーリーの根幹を成す“タイムループ”のアイデアにしても決して本作のオリジナルとは言い難い。それでも、面白ければ全く問題は無いのだが、タイムループ物の秀作である「恋はデジャ・ブ(1993年)」に比べるとストーリーは単純であり、“ギタイ殲滅”というオチが最初から分かってしまっているところが相当に物足りない。

また、未来から持ち帰ることが出来るのが“経験”だけという設定に固執しすぎてしまったところも、本作のストーリー展開を不自由にさせた大きな要因の一つであり、どんなに練習を繰り返しても体力的には元の広報担当将校のまんま。ご都合主義と言われても良いから、もっと大胆で自由な発想を取り入れるべきだったろう。

一方、そんなストーリーの弱点を補うべき視覚効果も凡庸であり、パワードスーツ一つを取ってみてもデザイン的な斬新性は皆無。アクションシーンにもこれといったアイデアが見当たらないため、ギタイとの戦闘シーンが見どころになっておらず、それはこの手の作品にとって致命的なことだと思う。

ということで、色々と悪口ばかり書いてしまったが、そんな大きな欠点を相当程度カバーしているのが主演のトム・クルーズの真剣な演技。彼の存在が無かったら、低予算SF映画に漂う侘びしさを払拭することは出来なかった筈であり、俺の期待どおり“第二のチャールトン・ヘストン”の役割を立派に果たしてくれていると思います。