イングリッシュ・ペイシェント

1996年作品
監督 アンソニー・ミンゲラ 出演 レイフ・ファインズジュリエット・ビノシュ
(あらすじ)
第二次世界大戦末期。野戦病院で働く看護師のハナ(ジュリエット・ビノシュ)が看護を受け持つことになったのは、全身に重度の火傷を負った記憶喪失の男(レイフ・ファインズ)。イタリアの片田舎を移動中、親友の乗ったジープがドイツ軍の仕掛けていった地雷の餌食になる光景を目撃した彼女は、自分の受け持つ患者の最期を看取るため、彼と二人きりで廃墟と化した修道院に留まることを申し出る….


第69回アカデミー賞において作品賞&監督賞を含む9部門で栄冠に輝いた作品。

その全身火傷を負った人物は、北アフリカで撃墜された英国の飛行機の中から救出されたということで、“イングリッシュ・ペイシェント=英国人の患者”と呼ばれているのだが、本当は記憶を失っている訳ではなく、彼の回想シーンによって、砂漠を舞台にした美しい人妻との許されぬ恋の結末が次第に明らかにされていく。

本作は、そんな過ぎ去った悲恋の物語と、自分の愛する人々が次々に死んでいくことに耐えられなくなっていたハナの現在進行形のラブロマンスの行方とを同時並行的に描いているのだが、その過去と現在とを繋ぐ存在として元イギリス情報部員であるカラヴァッジョ(ウィリアム・デフォー)を配する等、ストーリー運びには相当の工夫の跡が窺える。

また、厳しくも美しい砂漠の描写やそれとは対照的な長閑さを感じさせるイタリアの中世風な街並み、さらにはイングリッシュ・ペイシェントことアルマシー伯爵が口ずさむ「ペーパー・ムーン」等の懐かしのアメリカン・ポップスといったように、ストーリー以外にも見る者を楽しませる要素が沢山詰まっているのも嬉しい限り。

偶然ではあるが、戦争を舞台にした大人のラブストーリー(+スパイ風味)という点では、先日拝見させて頂いた「ブラックブック(2006年)」と共通しているのだが、ベタと言われようが、甘いと言われようが、“お話し”好きの俺としてはやっぱり本作の方が断然面白かった。

ということで、このアルマシー伯爵というのは実在の人物であり、実際、第二次世界大戦中にアフリカでロンメル将軍に協力したこともあったようなのだが、本作のストーリーはあくまでもフィクションとのこと。ネット上の情報によると、原作となった小説の方がもっと奥が深いという話しもあるので、そのうち読んでみようかと思います。