北国の帝王

1973年作品
監督 ロバート・アルドリッチ 出演 リー・マーヴィンアーネスト・ボーグナイン
(あらすじ)
1933年、大不況下のオレゴン。列車を無賃乗車しながら各地を移動する失業者たちは“ホーボー”と呼ばれていたが、そんな彼等が心底恐れていたのが19号列車の鬼車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)。無賃乗車を発見すると容赦なくハンマーで列車から叩き落とすという噂に、誰も彼の列車にだけは近づこうとしなかったが、ある時、A-No.1(リー・マーヴィン)と名乗る一人のホーボーが19号列車に乗ると宣言する….


ロバート・アルドリッチ監督による中高年アクション映画。

たかが列車の無賃乗車の話と言うと、なんかコミカルな内容を想像してしまうのだが、シャックはこれまでに10数人のホーボーの命を奪っているということで、A-No.1とシャックの対決も正に命がけ。ラストでは、鉄鎖や角材、斧を使った両雄による流血の格闘シーンを見ることが出来る。

この両者の対決に、シガレット(キース・キャラダイン)という北国の帝王(=ホーボー界のチャンピオンみたいなもの?)になることを夢見る若者が絡んでストーリーは展開する訳であるが、この組み合わせであれば、最後は前途ある若者に花を持たせて終わるというのが若者映画全盛であった当時のパターン。

それにもかかわらず、何と本作のシガレットは最後の最後にA-No.1によって列車の上から川の中へと突き落とされてしまうところがなかなか興味深く、先日拝見した「ハリーとトント(1974年)」もそうであったように、この頃から中高年映画というジャンルが成立するようになったのかもしれない。

公開当時、リー・マーヴィン49歳、アーネスト・ボーグナイン56歳ということで、流石に両者とも全盛期のスピードは見られないものの、走る列車の上でのアクションシーンを自らこなしているのは大したもの。真面目になったリー・マーヴィンも悪くないが、迫力の点ではやっぱりアーネスト・ボーグナインの方が一枚上手だった。

ということで、長年見たかった作品をようやく鑑賞することが出来た訳であるが、まずは期待したとおりの力作で大満足。アクションシーンの合間に挿入されるダレ場の処理の巧さという点に関しては、今の作品よりもこの頃の作品の方が優れていたと思います。