ペルセポリス

2007年作品
監督 マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
(あらすじ)
1978年のイラン。9歳の少女マルジは進歩的な考えの両親とやさしい祖母に囲まれ、何不自由ない生活を送っていた。しかし、革命が起きてイスラム政権が誕生すると生活は一変、女性はヒジャブの着用を強制される等、風紀が厳しく取り締まられるようになり、さらにはイラン・イラク戦争が勃発。マルジの将来を憂いた両親は、彼女をウィーンへ留学させることにしたが….


マルジャン・サトラピというイラン出身の女性による同名の半自伝的グラフィックノベルを長編アニメ化した作品。

イラン人に対する差別みたいなこともあって、ウィーンでの留学生活に疲れたマルジは、イラン・イラク戦争終結後、再び祖国に帰って来るのだが、やはりそこでの宗教臭い生活にどうしても馴染むことができない。大学で知り合った男性との結婚生活にも失望した彼女は、もう二度と祖国には戻らない決意で、単身フランスへと旅立つ、っていうところで物語は終わってしまう。

そのため、マルジにとってイランと西欧のどちらで生活する方が幸せなのかという点については、結局、最後まで結論は出ていないのであるが、まあ、可能性があるだけ後者の方がマシっていうことなのかもしれない。

しかし、祖父が“王子様”だったり、娘を海外に留学させたり出来ることを考えれば、彼女はイランでもかなり裕福な家庭の出身であると推測されるため、作中で語られる現在のイラン政権に対するマルジやその家族の感想が、イラン国民のそれを代表するものと考えるのは少々早計なんだろう。

確かに、ヒジャブの着用を義務付けられたり、町中で走ることさえ出来ないといった具合に、イランにおける女性の暮らしは相当に窮屈そうではあるが、Wikipediaによると現政権になってから女性の教育水準が上昇し、識字率も向上しているという統計データもあるらしい。

ということで、原作の方は傑作の部類に属する作品らしいのだが、正直、本作を見てそれ程の感動を受けることは無かった。まあ、何でもかんでもアニメ化すれば良いってもんじゃないのは当然のことであり、特に本作のように“動き”よりも“切り口”が重要な作品の場合、下手にアニメ化してしまうと、かえって印象が平板になってしまうのかもしれません。