1979年作品
監督 ニコラス・ローグ 出演 アート・ガーファンクル、テレサ・ラッセル
(あらすじ)
深夜のウィーン。睡眠薬で自殺を図った女ミレーナ(テレサ・ラッセル)が、友人と名乗る男アレックス(アート・ガーファンクル)に付き添われて救急車で病院へ運び込まれてくる。二人はあるパーティー会場で出会い、お互いに愛し合うようになったのだが、年の離れた夫をプラハに残したまま女一人で奔放な生活を送っているミレーナに、アレックスは翻弄されどおしだった….
クライテリオン・コレクション・トップ10で、クリストファー・ノーランが第5位に選んだ作品。
ありきたりの言葉で言えば“魔性の女”ということになるのだろうが、このミレーナという女性、追いかければ逃げるし、逃げればしつこくまとわり付いてくるということで、とてもじゃないが、ウィーンの大学で精神分析を教えている真面目なアレックス君の手に負えるようなタマではない。
そんな訳で、全体の3分の2くらいまでは、悪い女に引っかかった男の悲哀が描かれているのだが、終盤になると、それまで脇役だとばかり思っていた刑事が鋭い推理力を発揮しだし、自殺騒動の裏側に隠されていたある犯罪の存在を暴いていく。まあ、アレックスにしてみれば、自由気ままなミレーナを“捕まえる”ためには、あの方法しか思い付かなかったのだろう。
ストーリーは、こん睡状態が続くミレーナに対する救命措置の描写(=これが結構グロい。)を随所に挿みながら、二人の出会いから彼女の自殺に至るまでを克明に描いているのだが、バラバラにされたエピソードの羅列という凝った手法が採用されているため、初めの頃は見ていてちょっと戸惑ってしまう。
しかし、黙って見続けていれば、各エピソードはジグソーパズルのように頭の中で自然に繋がっていくように配慮されているため、心配は無用。このへんの鮮やかなお手並みが、クリストファー・ノーランに高く評価されたのだと思う。
ということで、クリムトの絵画やキース・ジャレットの音楽等、脚本だけでなく小道具にも凝っているのだが、残念ながら、俺自身、こういった面倒な男女関係にいまひとつ興味が持てないことが致命的であり、満足度は中の中といったところ。アレックスを追い詰めていく刑事が、途中から急に優しくなる理由(=ホモ?)もよく理解出来ませんでした。