ブルジョワジーの秘かな愉しみ

1972年作品
監督 ルイス・ブニュエル 出演 フェルナンド・レイ、デルフィーヌ・セイリグ
(あらすじ)
ミランダ国の駐仏大使であるラファエル(フェルナンド・レイ)は、友人のテブノ夫妻等と一緒に晩餐に招かれていたセネシャル宅を訪れるが、出迎えたセネシャル夫人は“約束は明晩のはず”と言って、食事の支度もされていなかった。止む無く、彼等はセネシャル夫人を伴ってテブノ行きつけの料理旅館に行くことになったが、そこでは今朝方亡くなった店の主人の通夜が行われており、とても食事できるような雰囲気ではない….


1972年のアカデミー外国語映画賞に輝くルイス・ブニュエル晩年の代表作。

主要登場人物は、ラファエルにテブノ夫妻、セネシャル夫妻、そしてデブノ夫人(デルフィーヌ・セイリグ)の妹であるフローレンスの計6人。この後も、この6人が食卓に向かうシーンが度々登場するのだが、その度にいつも決まって何らかの障害が発生してしまい、結局、最後まで彼等は満足な食事にありつくことが出来ない。

ブニュエルと共同で脚本を担当したジャン=クロード・カリエールのインタビューが本編と同じDVDに収められているんだけど、それによると本作のテーマはこの“繰返し”にあるらしく、食事のシチュエーチョン以外にも映画の後半でセネシャル、テブノ、ラファエルの3人による“気が付いたら夢だった”というパターンが繰り返し描かれていたりする。

また、途中と最後にこれまた繰り返し挿入される、彼等6人がどこかの田舎道をとぼとぼと歩いて行くシーンがとても印象的であり、まあ、なんとなく遠からず訪れるであろう彼等の“死”を予感させるような映像なのにもかかわらず、彼等の表情からは恐れや悲しみといった感情を読み取ることは出来ず、むしろ退屈しのぎのためなら“死”さえ甘受するような雰囲気が漂っているあたりが、なんともブルジョワらしい(?)。

正直、難解なことで有名なブニュエル作品は、これまで「アンダルシアの犬(1928年)」と「昼顔(1967年)」くらいしか見たことがなかったのだが、コメディタッチで描かれている本作は割と取っ付きやすい内容であり、上映時間が102分とコンパクトに収められていることもあって、最後まで結構楽しく鑑賞することが出来た。

ということで、どういう理由か皆目見当がつかないが、この度、本作以外にも数点のブニュエル作品がDVDで再販されたらしい。あまり頭を悩ませるような作品を見るのは本意ではないのだが、まあ、せっかくの機会なのであと2、3作付き合ってみたいと思います。