ダークナイト

グラフィックノベルの第二弾は、フランク・ミラーの原作・作画によるバットマン物。

いや、電話帳のような本の重さと活字の読みにくさから“グラフィックノベルは「WATCHMEN」だけで十分”と思っていたのだが、年老いたバットマンが青タイツ姿のあのスーパーヒーローと死闘を繰り広げるという本作のあらすじを耳にして、数日迷った挙句に結局購入してしまった。

本作には1986年に発表された「ダークナイト・リターンズ」と、2001年に発表された続編の「ダークナイト・ストライクス・アゲイン」の2作品が収められている訳であるが、やはり、引退してから10年後、已むに已まれぬ事情からバットマンとして復活を遂げるという内容の前編の方が圧倒的に面白い。

このときブルース・ウェインは既に55歳になっている訳であるが、肉体的な衰えは如何ともし難く、最初のボス戦では逆に半殺しの目にあってしまう始末。その上、彼の“自警行為”は政府やマスコミから犯罪視されており、とても華麗なる復活とは言えないものの、3代目ロビン(=なんと女の子!)の助けを借りながら、それこそあらゆる手段に訴えて自らの信じる“正義”を貫き通そうとする姿勢は感動的ですらある。

続編の方は、それから3年後の出来事を描いているのだが、前編の最後でバットマンは世間的には死んだことになっている故、彼の出番はあまり多くない。代わりに懐かしのアメコミ・ヒーロー達が大挙登場している訳であるが、俺が名前を知っていたのはワンダーウーマンくらいのものであり、本作を真に楽しむためには相当のアメコミに関する知識が必要になるのではないだろうか。

ということで、宿命のライバルとなるスーパーマンのことも決して悪役としては描いておらず、様々な葛藤を抱えながら闘い続けるそのお姿は、ある意味、バットマンよりも共感できる。まあ、そんなところも含めて評判どおりの大傑作だった訳であり、正直、このレベルの作品を書ける漫画家が今の我が国に存在するのか、“マンガ大国”の一国民として大いに心配になってしまいました。