人生は四十二から

1935年作品
監督 レオ・マッケリー 出演 チャールズ・ロートン、チャーリー・ラグルス
(あらすじ)
生粋の英国人執事であるラグルス(チャールズ・ロートン)は、パリ滞在中、主人であるバーンステッド卿のポーカーの負けの代償として、アメリカ西部の田舎町レッド・ギャップからやってきたエグバート(チャーリー・ラグルス)とエフィのフラウド夫妻に雇われることになってしまう。不安な気持ちを胸に彼等と一緒にアメリカへ渡ったラグルスだったが、そこで彼を待っていたのは英国とは異なる全く自由な気風だった….


レオ・マッケリーが「新婚道中記(1936年)」の前年に発表した作品。

最初は1908年当時のパリが舞台ということで、執事の扱い方や公衆の面前でのマナー等を知らない田舎者マル出しのエグバートをネタにした、まあ、アメリカ人にとっては“自虐的”なギャグが次から次へと登場し、アメリカの観客がこれを見て気分を害しはしなかったか、こっちの方が心配になってしまう。

しかし、舞台がレッド・ギャップに移るとムードは一変し、冒頭の失点を取り返そうとするかの如く“自由の国アメリカ万歳”といった主張が前面に押し出されてくる。ラグルスがゲティスバーグにおけるリンカーンの有名な演説を暗誦したり、彼の後を追ってアメリカにやってきたバーンステッド卿が酒場の女にメロメロになってしまうシーンは、階級社会であるイギリスをやんわりと批判しているのだろうが、マッケリーの見事な演出のせいでこれがなかなかの名場面にもなっている。

名優チャールズ・ロートンが執事を演じるというのはちょっと意外であったが、実際の演技には全く違和感がなく、有能で、かつ、英国人らしいユーモアのセンスを身に付けた執事役を堂々と演じていた。

内容的にちょっと残念なのは、本作の主張する“自由”や“平等”の思想が、(インディアンは勿論のこと)フラウド夫妻のレッド・ギャップの屋敷に雇われている黒人や東洋人の召使に適用されないところであり、まあ、1935年公開という時代を考えれば仕方ないのかもしれないが、コンプレックスの裏返しとしてのアメリカ民主主義の限界を垣間見たような気がした。

ということで、原題は「RUGGLES OF RED GAP」だし、作中にもラグルスの年齢に関する情報は出てこなかったように思うのだが、邦題にある“42歳”というのはいったいどこから出てきたものなのでしょうか。