2002年作品
監督 フェルナンド・メイレレス 出演 アレクサンドル・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ
(あらすじ)
“シティ・オブ・ゴッド”と呼ばれるリオデジャネイロの貧民街では、多くの子供たちが幼いときから暴力と隣り合わせに生きており、その頂点に立っているのがリトル・ゼ(レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ)と名乗る一人の若者。一方、暴力を好まないカメラ好きの少年ブスカペ(アレクサンドル・ロドリゲス)は、出来るだけ彼等と関わり合いにならないよう暮らしていたが…
1960年代から80年代にかけてのリオデジャネイロの“ファヴェーラ”を舞台にした作品。
あまり楽しそうなストーリーとは思えないため、高名な作品にもかかわらず長らく見るのを躊躇っていたのだが、この度のリオデジャネイロでのオリンピック&パラリンピック開催を記念して(?)ようやく鑑賞。案の定、繰り返し見たくなるような内容ではなかったものの、作品自体はなかなか良く考えられた素晴らしいものだった。
さて、後で調べたところによると出演者の多くが素人だったようであり、演出も、良く言えば“自然”、悪く言えば“適当”のように見えるのだが、実はその自由奔放さの陰で様々な工夫や配慮が施されており、多くのキャラクターが登場する群像劇にもかかわらず、誰が誰だか分からなくなるようなことは一度も無い。
また、脚本もよく練られており、雑多なエピソードの羅列が次第にきちんとした因果関係へと収束していくのを眺めているのはとても良い気持ち。あまりによく出来たお話なので、エンドロールの最中にこのストーリーが事実に基づいていることを知らされたときにはちょっと驚いてしまった。(まあ、ブスカペとマネとの出会い等、それなりの脚色はあるんだろうけどね。)
ちなみに、見ていて一番印象的だったのは、子供も含めて大勢の人々が死んでいくにもかかわらず、映画的なスリルやサスペンスを全く感じ取ることが出来ないところであり、そんな意味では戦争映画に近いのかなあ。おそらく、ファヴェーラにおける命の価値は、戦場におけるのと同程度ということなんだろう。
ということで、子供が歩いて行けるくらいしか離れていないにもかかわらず、リオデジャネイロ市内とファヴェーラとの経済格差は驚異的なものであり、本作で描かれた諸問題のほとんどがそれに起因していると思われる。格差の拡大が叫ばれて久しい我が国においても、速やかな対応が望まれるところです。