ベル・オブ・ニューヨーク

1952年作品
監督 チャールズ・ウォルターズ 出演 フレッド・アステア、ヴェラ=エレン
(あらすじ)
資産家の叔母を持つプレイボーイのチャーリー(フレッド・アステア)は、たまたま街で見かけたアンジェラ(ヴェラ=エレン)に一目惚れ。社会奉仕活動に熱心な彼女の気に入られようと、彼はそれまでの自堕落な生活を改めて道路清掃夫や乗合馬車の御者として熱心に(?)働き、ようやく彼女との結婚にこぎつけるが、なんと結婚式の前日に酒を飲み過ぎてしまい、うっかり式をすっぽかしてしまう….


土曜は貴方に(1950年)」に続くフレッド・アステア&ヴェラ=エレンのコンビによるミュージカル作品。

「踊る海賊(1948年)」が期待外れだったので、その欲求不満の解消のために本作を見てみた訳であるが、これが見事なくらいに「踊る海賊」とは対照的な作品になっているので、ちょっと驚いてしまった。

ストーリーとしては典型的な“Boy Meets Girl”物であり、まあ、それがミュージカル映画の基本であることは十分承知しているつもりであるが、それにしても1950年代に公開された作品とは思えないほどに本作のストーリーは単純明快。「踊る海賊」なら普通のコメディ作品としてリメイクすることも可能であろうが、本作から歌と踊りを取り去ってしまったら、それこそ何にも残らない。

しかし、歌と踊りの方はというと、「トップ・ハット(1935年)」のときのようにアステアが砂の上でタップを踊ったり、「踊らん哉(1937年)」のローラースケートの代わりにアイススケートでヴェラ=エレンとのアイスダンスを披露してくれたりと、なかなか見どころ満載。さらには、特撮を使って高い塔の上や空中でのダンスまで見せてくれており、こういった工夫はいかにも1950年代らしい。

出演者の方では、アステアが素晴らしいのはいつものことであるが、本作ではヴェラ=エレンが頑張っている。DVDに収められていた情報によると、意外にも彼女の出演作は13本しかないとのことであるが、「踊る大紐育(1949年)」や「土曜は貴方に」なんかとは異なり、本作における彼女の位置づけはアステアに次ぐ堂々のNo.2であり、その意味でも彼女の代表作といって良いのだろう。

ということで、本作は何故か本邦未公開のため日本語の邦題が付けられていないのだが、「ベル」というのはフランス語の「Belle」のことで、“美人”とか“恋人”とかいう意味らしい。そういえば、Beatlesの曲にも“Michelle, ma belle…”なんていう歌詞がありましたね。