ジェニーの肖像

1947年作品
監督 ウィリアム・ディターレ 出演 ジェニファー・ジョーンズ、ジョセフ・コットン
(あらすじ)
売れない画家イーベン・アダムス(ジョセフ・コットン)は、偶然、冬のセントラル・パークでジェニー(ジェニファー・ジョーンズ)という可愛らしい少女と出合う。彼女は、“私が大人になるまで待っていて”という謎のような言葉を残して彼の前から姿を消してしまうが、この出会いから強い印象を受けたアダムスは、記憶を頼りに彼女の姿をスケッチに描こうとする….


ロバート・ネイサンの有名なファンタジー小説の映画化。

この後の一年程の間、ジェニーは何度かアダムスの前に姿を見せるんだけど、不思議なことに、彼女は会うたびごとにどんどん美しい女性へと成長していく。そして、伯母の元へ行くといったきり消息を絶ってしまった彼女を探すため、アダムスが実在の彼女を知る人物を探し当てると、彼はそこで驚くべき事実を知ることに・・・

まあ、この手のアイディアについては、石森章太郎の「ジュン」や萩尾望都の「マリーン」を始め、これまで多くのファンタジーやSF作品で使われてきている故、例え、本作の原作がそのハシリだったとしても、今さらこのアイディアだけで感動するっていう訳にもいかないあたりが困ったところ。

しかし、公開当時28歳のジェニファー・ジョーンズは、(流石に少女時代のジュニーを演じる場面では若干の違和感があるものの)本当にとてもきれいであり、その美貌を眺めるためだけでも十分に本作を鑑賞する価値がある。また、後の再婚相手でもあるセルズニックという大物の後ろ盾があったせいかどうかは知らないが、嵐のクライマックスシーンでは、モノトーンの画面に緑や紫の色が付くという珍しい工夫もされている。

一方、相手役のジョセフ・コットンも、これまたいつもながらの抑えめの渋い演技が光っており、天才画家の閃きみたいなものはあまり感じられないが、売れない画家役ということであれば、まずは無難にこなしているといって良いだろう。また、ジェニファー・ジョーンズに気を使ったせいか、彼女以外の女優はエセル・バリモア、リリアン・ギッシュ(!)とおばさんばっかりなんだけど、このお二方の品の良さにはかえってちょっと感心してしまった。

ということで、最後の最後にその全貌が明かされるアダムス作「ジェニーの肖像」に名画ならではのオーラが感じられないあたりは、まあ、当然のこととは言え、少々残念ではあるが、全体的に良くまとまった佳品であり、また、ジェニファー・ジョーンズが一番きれいに撮れている作品といって良いかもしれません。