1936年作品
監督 フランク・ボーゼージ 出演 マレーネ・ディートリッヒ、ゲイリー・クーパー
(あらすじ)
精神科医の妻になりすました女詐欺師のマドレーヌ(マレーネ・ディートリッヒ)は、宝石商から220万フランの真珠の首飾りをまんまとだまし取り、仲間と合流するために自動車でパリからスペインへと向かう。しかし、スペイン国境の税関が行う所持品検査において首飾りが発見されるのを恐れた彼女は、それを前にいたアメリカ人旅行者トム(ゲイリー・クーパー)の上着のポケットにこっそりと忍びこませてしまう….
「モロッコ(1930年)」以来の顔合わせとなるマレーネ・ディートリッヒ&ゲイリー・クーパーによるコメディ作品。
トム自身は首飾りのことを全く気付いていないんだけど、マドレーヌの方はそれを取り戻すため、気のあるふりをして彼に近づく。そして、彼女の仲間が手品と偽って見事な手際で彼から首飾りを取り戻すことに成功するが、詐欺グループでの生活に嫌気がさしていた彼女はトムに全ての事実を打ち明ける、っていう具合にストーリーは展開していく。
ディートリッヒは、本作でも精神科医の妻やヨーロッパ貴族といった上級階級のレディに扮している訳だが、正体は詐欺師ということで、いつものようにエラソーなところが鼻に付くという心配はない。それどころか、トムに真実を告げることを決心してからの彼女は、なかなか可愛くさえ見えてくる。
一方のクーパーの方は、前半はマドレーヌの甘い言葉にころっと騙されてしまう、ちょっと間抜けな役どころであるが、真実を知ってからの彼は、その長〜いおみ足を駆使して彼女を窮地から救い出すという、とてもカッコいいキャラへと大変身。その後の見事なまでのハッピーエンドを含め、本作はとても面白いコメディ作品にまとめられている。
実は、本作のプロデュースを担当しているのは、あのエルンスト・ルビッチな訳だが、監督のフランク・ボーゼージの方も大ベテランである故、本作に対するルビッチの直接的な影響の程度についてはなかなか推測し難いところ。しかし、少なくとも、彼自身がディートリッヒを起用して撮った「天使(1937年)」に比べれば、こっちの方がずーっと面白い。
ということで、無表情で白のオープンカーをぶっ飛ばすディートリッヒのお姿は実に決まっており、とても魅力的。まあ、彼女のことをコメディエンヌと呼ぶのには依然として大きな躊躇いがあるものの、こういうふうに使えばコメディでも十分に通用するっていうことに関しては、全く異論ありません。