クーパーの花婿物語

1944年作品
監督 サム・ウッド 出演 ゲイリー・クーパーテレサ・ライト
(あらすじ)
資産家の令嬢マッジとの結婚式を間近に控えた大学教授のキャス・ブラウン(ゲイリー・クーパー)のもとへ、シカゴにある産科病院から一通の手紙が届く。実は、彼にはニューヨークに住むイサベル(テレサ・ライト)という女性と(極めて短期間ではあるが)結婚していたという過去があり、その結婚は星占いを妄信する彼女の母親の猛反対に合って無効にされていた.…


サム・ウッドが「打撃王(1942年)」の2年後に発表したコメディ映画。

原題にもなっている“カサノヴァ・ブラウン”というのがゲイリー・クーパー扮する主人公の本名であり、真面目人間の彼は、彼と同じ名前を持つ稀代のプレイボーイのことをあまり快く思っていないようなのだが、運命のいたずらにより、彼自身も短期間のうちに3人の女性との結婚、婚約を繰り返すことになる。

ストーリーは、この時期のサム・ウッドにしては珍しい極めてナンセンスな内容のロマンチックコメディであり、初めてイサベルの両親に会いに行ったキャスが、煙草の吸殻の不始末から彼女の家を全焼させてしまうという展開には吃驚仰天。さらに、後半に見せてくれる彼の親バカぶりも、常軌を逸していて大変面白い。

また、先日見た「甦る熱球(1949年)」にも出ていたフランク・モーガンがキャスの婚約者であるマッジの父親役で登場するのだが、彼は財産目当てでした自らの結婚生活を悔やみ、キャス(=当然、彼は財産目当てでマッジと結婚しようとしている訳ではない。)に同じ過ちを犯させないよう実の娘との結婚の邪魔をするというなかなかユニークなキャラであり、そのぶっ飛んだ思考回路がとても愉快だった。

まあ、話を膨らませすぎたせいか、ラストのオチが弱くなってしまっているのが残念であるが、真面目くさった表情で次々とギャグを繰り出すゲイリー・クーパーのコメディアンぶりは流石であり、また、聡明な女性ばかり演じているような印象の強いテレサ・ライトが、珍しく可愛らしいキャラを演じているのも悪くない。

ということで、監督と主役が同じである感動作「打撃王」と比較すると、本作の知名度は相当落ちるような気もするが、これがなかなか楽しいコメディ映画に仕上がっており、個人的にはむしろこっちの方が気に入りました。