誰が為に鐘は鳴る

1943年作品
監督 サム・ウッド 出演 ゲイリー・クーパーイングリッド・バーグマン
(あらすじ)
スペイン内乱に人民戦線派として参加したアメリカ人のロバート・ジョーダンゲイリー・クーパー)は、橋の爆破命令を実行するために岩山を根城にしたジプシーのゲリラ達に協力を求める。そこで、彼は、両親を政府軍に殺され、ゲリラ達に保護されていた美しい娘マリア(イングリッド・バーグマン)と出会い、お互いに激しく惹かれ合う….


E・ヘミングウェイの同名小説の映画化。昔、TVで見た記憶があるが、今回、何故再見する気になったのかは本人にも不明。

スペイン内乱を背景に、正義感に燃えた勇気あるアメリカ人青年と美しいスペイン娘とのラブロマンスが描かれており、その意味では割とストレートな娯楽作品なんだけど、そんな中で、ジプシー・ゲリラのリーダー格であるパブロの複雑なキャラクター設定が、彼の妻であるピラーの存在感と相俟って、作品に微妙な陰影を与えている。

パブロは、以前、自分の村のファシスト達(=といっても、実際はみんな彼の知人らしい。)を皆殺しにしたという過去があるんだけれど、おそらくそれはバリバリの女闘士でもある妻ピラーの影響によるところが大きかったんだろうと思われ、今は一時の激情に駆られて知人を死に追いやってしまったことを後悔している。そのため、酒におぼれ、妻や仲間たちからの信頼も失いかけている有様なんだけど、彼が敵になるのか味方になるのか最後まで判らないっていう設定はなかなか上手いと思う。

さて、出演者では「カサブランカ(1942年)」で注目を集めた直後のイングリッド・バーグマンの圧倒的な美しさが何といっても印象的であり、監督のサム・ウッドも意識的に彼女のクローズアップを多用しているんだけど、さすがにちょっと多すぎで、見ているこっちの方が恥ずかしくなってしまうくらい。相手役のゲイリー・クーパーは、この役柄にしては明らかにフケ過ぎであるが、まあ、これも美人の新人女優に対するハリウッド的配慮なんだろう。

ということで、今回、改めてバーグマンの出演作品を眺めて見て思ったんだけど、前出の「カサブランカ」以外ではアカデミー主演女優賞をとった2本とヒッチコックの作品が目立つ程度であり、現在、傑作とか、名作とか言われている作品への出演が少ないのがちょっと意外だった。まあ、それもロッセリーニとの不倫騒動の影響が大きいんだろうけど、そんな訳で、本作も彼女の代表作の一本になるんだろうなあ。