罪と罰

カラマーゾフの兄弟」を読了したので、もう、ドストエフスキーはいいかっていう気もしていたんだけど、様々な機会に言及される頻度はこっちのほうが幾分上のような印象もあったので、ついでに「罪と罰」の方も読んでみた。

岩波文庫で全3巻なんだけど、「カラマーゾフの兄弟」に比べれば短いし、“事件”が起きるタイミングはこっちの方が圧倒的に早い。そのため、物語の世界へ入り込むのが容易であり、あまり苦労することもなく一気に最後まで読み通すことができた。

まあ、極めて有名な作品の故、苦学生ラスコーリニコフが身勝手な理屈で自らの行為を正当化し、強欲な老婆を殺害するっていう大筋自体は、予備知識として読む前からあった訳なんだけど、その後、ほとんど彼自身の自滅のような形で事件に決着がつくという展開は、ちょっと予想外。

俺は、てっきり彼とこれまた高名な予審判事のポルフィーリィとの間で丁々発止の裁判劇が繰り広げられるものとばかり思っていたんだけど、ポルフィーリィは途中からお話しの前面に出てこなくなってしまい、それに代わるように登場する怪人スヴィドリガイロフの行動が物語に新たなる奥行きを与える。彼が、まるでラスコーリニコフの身代わりのような形で自らの命を断つという展開はとても印象的です。

ということで、本作は全く予想外な程に面白い作品であり、なんかドストエフスキーのファンになってしまいそうな予感さえしてきた。とりあえず、次は「悪霊」を読んでみることにします。