遠い太鼓

1951年作品
監督 ラオール・ウォルシュ 出演 ゲイリー・クーパー、マリ・アルドン
(あらすじ)
インディアンとの抗争が続くフロリダ地方。ワイアット大尉(ゲイリー・クーパー)はインディアンへの武器密売に使われていた砦を襲い、見事にこれを爆破。捕虜だったジュディ(マリ・アルドン)等の解放にも成功する。しかし、彼等を連れて基地に帰ろうとする途中、大群のセミノール族の襲撃にあい、ワイアット達は止む無くジャングルの沼地へと逃げ込むが….


ゲイリー・クーパーが、「真昼の決闘(1952年)」の前年に主演した異色西部劇。

最初の任務である砦の爆破がいとも簡単に成功してしまったので、あれっと思ったが、本当のお楽しみはここから。ワイアット達がワニや毒蛇の住むジャングルの中、執拗なインディアンの追撃を逃れながらどうやって基地まで帰りつくかっていうのがテーマの作品でした。

そんな訳で、ストーリーはいたって単純なんだけど、繰り返し襲ってくるインディアンとの闘いの合間に、珍しい大自然の映像やワイアットとジュディのロマンス等々を織り込み、見ている者を飽きさせない。このへんは、監督のラオール・ウォルシュの手堅い演出の賜物だろう。

ゲイリー・クーパー扮するワイアットは、インディアンの妻を誤って味方の兵士に殺されてしまったという過去を持ち、普段は部隊を離れて息子と静かな生活を送っているという設定。“軍隊を恨んでいないのか”というジュディの問い対し、そんな彼が答える“恨みを持ち続けるだけの人間にはなりたくない”というセリフは、被害者家族の問題が色々な面でクローズアップされている昨今、ちょっと印象に残った。

相手役のマリ・アルドンはどこかで見た顔だなあって思っていたら、「旅情(1955年)」に出ていた女優さんだった。ちょっと小粒だけど、まあ、ジャングルが舞台ということで有名な女優さん達にみんな逃げられてしまった結果、彼女が抜擢されたのかも知れないなあ、なんて想像しながら見ていた。

ということで、正直、あまり期待しないで見た作品だったけど、これが意外な拾いもの。ゲイリー・クーパーが敵の酋長との一騎打ちに勝利し、大方決着がついたところでようやく味方の応援部隊が到着するというお約束ラストも含め、なかなか面白い作品でした。