善人サム

1948年作品
監督 レオ・マッケリー 出演 ゲイリー・クーパー、アン・シェリダン
(あらすじ)
一流デパートの雇われ支配人であるサム・クレイトン(ゲイリー・クーパー)は、他人の窮地を放っておけない根っからの善人。それなりの収入はあるものの、困っている人を見るとすぐにお金を貸してしまうため、いまだに借家住まいであり、妻のルー(アン・シェリダン)はマイホームを持つことを夢見ている。そんなある日、ルーの理想にピッタリの家が売りに出されることになり….


レオ・マッケリーゲイリー・クーパーとコンビを組んだ人情喜劇。

主人公サムの人の良さは少々常軌を逸しており、気の毒に思えば返すあてのない人間にもお金を貸してしまうし、隣人の車が故障すれば進んで自分の車を差し出す始末。救いは、慣れっこになってしまった妻のルーが諦め半分の笑顔で明るく見守ってくれているところなのだが、ことがマイホームとなると話は別。すっかり乗り気になってしまった妻を見て、何故かサムは浮かぬ顔。

実は、マイホームの購入資金を妻に内緒で知人に貸してしまったからであり、まあ、その後、ストーリーは二転三転するのだが、最後は知り合いの銀行家が購入資金を融資してくれることになり、目出度くハッピーエンド。たまたまその日がクリスマスに当たることもあり、クリスマス映画の定番である「素晴らしき哉、人生!(1946年)」を想起させるような内容になっている。

しかし、一番違うのはキャプラの作品では変化するのが主人公自身の考え方なのに対し、本作で変わるのは一度は断った融資話に応じてくれる銀行家をはじめとする周囲の人々であるところ。その意味では、本作の方がより前向きで楽観的な内容になっているのだが、それは第二次世界大戦に深く関わったキャプラと、戦時中もヒット作を連発していたマッケリーの差に起因するのかもしれないなあ。

ということで、公開当時47歳のゲイリー・クーパーは、例の苦虫を噛み潰したような切なげな表情を随所に織り交ぜながら善人サムを好演。まあ、元々リアリティの希薄なストーリーではあるが、下手をすれば落語の与太郎みたいになってしまいそうな主人公にそれなりの存在感を持たせているのは彼の功績でもあるのだろう。監督のマッケリーとコンビを組んだ作品がこれ一作だけ(?)というのがちょっぴり意外でした。