生きるべきか死ぬべきか

1942年作品
監督 エルンスト・ルビッチ 出演 キャロル・ロンバード、ジャック・ベニー
(あらすじ)
第二次世界大戦中のポーランドナチスのスパイであるシレツキー教授は、イギリスで入手したポーランド地下組織の情報を国内に持ち込もうとする。その情報を入手した自称ポーランドの偉大な名優のヨーゼフ(ジャック・ベニー)は、シレツキーの計画を妨害するため、ナチスの高官に化けて一芝居うつことに….


ルビッチが「天国は待ってくれる(1943年)」の前年に公開した作品。

ヨーゼフとマリア(キャロル・ロンバード)の役者夫婦が主役の作品であり、題名は、夫婦して「ハムレット」に出演中のマリアが、彼女の熱烈なファンであるという若くてハンサムな空軍中尉からのラブコールに対し、“ヨーゼフが舞台上で「生きるべきか死ぬべきか」というセリフを喋りはじめたら、楽屋に会いに来て”と答えたことに由来する。

まあ、何も知らないヨーゼフにしてみれば、自分の十八番である「ハムレット」の最大の見せ場のところで観客に席を立たれてしまう訳であり、自信家の彼がそれが原因で落ち込んでしまうというのがなかなか笑えるギャグになっている。

作品の冒頭、本筋とは直接関係のないエピソードから始まるため、ストーリーを把握するまでにちょっと混乱するんだけど、最後まで見てみれば実はそのエピソードが本作のクライマックスの重要な伏線となっていたことが分かる等、脚本もよく練られており、55歳で早逝したルビッチとしては、“晩年”の代表作といって良い出来の作品だと思う。

主演のジャック・ベニーは、どちらかというとラジオやテレビ番組での活躍のほうが有名だと思うが、映画俳優としての演技も堂々としたもので、これには感心。相手役のキャロル・ロンバード(=本作が公開された年に飛行機事故により帰らぬ人となってしまったため、これが彼女の遺作になってしまった。)は、残念ながら本作ではあまり出番は多くないが、とても魅力的な女優さん。彼女の代表作でもあるハワード・ホークスの「特急二十世紀(1934年)」のほうも早く見てみたいものです。

ということで、ラストは再び「生きるべきか死ぬべきか」のギャグで終わる訳なんだけど、そのときに席を立つのは例の空軍中尉とは別の男。事前に何の説明もないんで、一瞬戸惑うんだけど、このへんのスマートさはさすがルビッチというところです。