エージェント:ライアン

2014年作品
監督 ケネス・ブラナー 出演 クリス・パインキーラ・ナイトレイ
(あらすじ)
アフガニスタンで重傷を負った元海兵隊員のジャック・ライアン(クリス・パイン)は、医学生キャシー(キーラ・ナイトレイ)の手助けを受けながら懸命なリハビリに励んだ結果、無事、健康な体を取り戻す。そんな彼に接近してきたのがCIAであり、その分析官にスカウトされたジャックは、表向きはウォール街投資銀行で働きながら、不審な経済活動を監視する任務に就くことに….


トム・クランシーが創造したキャラクターである“ジャック・ライアン”が活躍するアクション映画。

これまで映画化されたジャック・ライアン・シリーズは全部で4作あるそうだが、そのうち俺が見たことがあるのは「レッド・オクトーバーを追え!(1990年)」の一本だけ。その内容も今やほとんど記憶に残っておらず、正直、ジャック・ライアンに関する基礎知識は全くのゼロという状態で鑑賞に臨んだのだが、幸い、本作は新シリーズのリブート作品ということで、ジャック・ライアンがCIAのエージェントになるまでの経緯が詳しく紹介されている。

それによると、彼はロンドン留学中に起きた9.11テロの映像を見て海兵隊に志願したというバリバリの愛国者であり、負傷による除隊後、復学して経済学の博士号を取得する。要するに、海兵隊員の体力と経済学に関する卓越した知識とを併せ持つスーパーマンであり、実生活においても美人医師の恋人を持つエリート銀行員という誠に羨ましいご身分。

そんなマンガみたいな人物を主人公にしたご都合主義満点のストーリーとくれば、これはもう“オバカ映画”の極地みたいな作品であるべき筈なのだが、何故か本作は“007シリーズ”というより、“ボーンシリーズ”を意識しているようであり、変に真面目な雰囲気の中、最後は大統領に褒められてデレデレという不気味なエンディングを迎える。

まあ、所詮オバカ映画には違わないので強引なストーリーにツッコミを入れることは差し控えたいと思うが、東西冷戦の時代じゃあるまいし、今、愛国心丸出しの反ロシア映画を作るという製作態度は全く意味不明。連日連夜“日本エライ!”を連呼する我が国のマスコミも、諸外国からはこのように見えるのかもしれないなあ。

ということで、笑いたいのに笑わせてもらえないという非常に不親切な作品に仕上げられており、監督のケネス・ブラナーはこういった娯楽作品には向いていないと思う。あるのか無いのか分からないが、新シリーズの第二弾が作られたとしてもおそらく見ることはないでしょう。