ミュンヘンへの夜行列車

1940年作品
監督 キャロル・リード 出演 マーガレット・ロックウッド、レックス・ハリソン
(あらすじ)
第二次世界大戦前夜のプラハ。装甲板の研究者であるボマーシュ博士は、侵攻してきたドイツ軍から自分の研究成果を守るため、一人娘のアンナ(マーガレット・ロックウッド)を伴って英国への脱出を図るが、その直前、彼女だけがナチスに捕らわれてしまう。しかし、強制収容所に送られた彼女は、そこで知り合いになったカールの協力を得て収容所を脱出し、父の後を追って英国へ向かう….


今度は、キャロル・リード第二次世界大戦中に監督したスパイ映画を鑑賞。

ズデーテン地方で教師をしていたというカール(ポール・ヘンリード)は、収容所内でも反ナチス的言動を繰り返してアンナの信頼を得るが、彼の正体はゲシュタポのスパイであり、彼女に同行して英国に潜伏していたボマーシュ博士の行方を突き止め、父娘ともどもドイツへと連れ戻す。

一方、レックス・ハリソン演じるガス・ベネットは、楽譜売りの歌手に扮装してボマーシュ博士の身辺警護に当たっていた英国側の諜報部員。ゲシュタポにまんまと一杯食わされた彼は、ボーマシュ父娘を取り戻すため、今度はナチスの将校に変装し、単身ドイツへ乗り込むというストーリー。

ここのところ、第二次世界大戦を舞台にしたスパイ物を連続して拝見している訳であるが、いくら優秀な諜報部員だからとはいえ、たった一人でナチスに捕らわれた父娘を救出するというのは無茶な話であり、その意味では本作が一番フィクション性が高い。まるで007シリーズのハシリみたいな作品なのだが、まあ、そう割り切ってしまえばこれがなかなか面白い。

プロデューサーがヒッチコックの「バルカン超特急(1938年)」と同じ人ということで、脚本、音楽、ヒロインが両作品に共通な上、コメディリリーフを務めるベイジル・ラドフォードとノーントン・ウェインに至っては役名も含めて全く同じキャラとして再登場しており、おそらく本作は「バルカン超特急」の姉妹編として製作されたものと思われる。

ということで、演出もヒッチコックを強く意識しているため、キャロル・リードらしさは比較的希薄であるが、レックス・ハリソンとポール・ヘンリード(=クレジットがPaul von Hernriedとなっていたので調べてみたら、何とオーストリア出身だった。)の演技合戦を含め、内容的には見所満載。ヒギンズ教授とは異なるレックス・ハリソンの“普通の”歌声を聴くことも出来ます。