最後の突撃

1944年作品
監督 キャロル・リード 出演 デヴィッド・ニーヴン、スタンリー・ホロウェイ
(あらすじ)
第二次世界大戦が始まり、国民総動員令によってイギリス各地から様々な境遇の男たちが軍隊に召集されてくる。ボイラー技師だったブルワー(スタンリー・ホロウェイ)等8名は、ナポレオン戦争以来の伝統がある歩兵連隊のペリー小隊に配属されるが、教育担当であるのフレッチャー軍曹の厳しい訓練に耐え切れず、隊を率いるペリー少尉(デヴィッド・ニーヴン)に改善を申し入れる….


第二次世界大戦中は陸軍の映画班に所属していたというキャロル・リードが戦時中に撮った作品。

ペリー小隊に配備された8名はいずれも召集によって集められた素人集団であり、士気も体力も限りなく低レベルだった訳であるが、そんな彼らが厳しい訓練を通じて次第に一人前の兵士へと成長していく様子がテンポよく描かれている。

上官のペリー少尉のみならず、最初は冷酷そうに見えたフレッチャー軍曹も、実際はとても部下思いの好人物であり、また、訓練の内容自体も体力の増強を目的としたものがほとんどで、戦後に作られた戦争映画みたいに陰湿だったり、非人道的だったりというところは全くない。

まあ、こういったストーリーは、自分(又は家族、恋人、友人e.t.c.)がいつ軍隊に召集されるのか不安に思っていた当時の観客に対し、“軍隊もそれ程悪いところではなさそう”というそれなりの慰めを与えるものであり、少々現実離れしているような気もするが、当時の状況からすれば致し方ないところ。

しかし、その一方で、北アフリカの最前線に送られたペリー小隊が、ドイツ軍からの降伏の呼びかけに応じることもなく、弾薬をほとんど使い果たした状態で最後(=最期)の突撃を試みるというラストは、彼らの勇気だけでなく、戦争の悲惨さをも伝える内容となっており、制作者側はこのあたりに関していったいどんな考えを持っていたんだろう。

ということで、あまりキャロル・リードらしさは感じられなかったものの、戦意昂揚映画としての様々な制約があったことを考慮すれば、まあ、それなりにまとまった作品だと思う。また、若き日の怪優ピーター・ユスティノフが、ペリー小隊の宿舎として徴発されるカフェの主人役で顔を見せています。