デッド・エンド

1937年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 シルヴィア・シドニー、ジョエル・マクリー
(あらすじ)
ニューヨークのイーストリバー沿いにある安アパートに住んでいるドリナ(シルヴィア・シドニー)は不良少年達のリーダー格である弟のトミーと二人暮らし。苦学して大学の建築科を卒業したデイヴ(ジョエル・マクリー)に昔から憧れを抱いているが、彼も建設会社に就職できるあても無いままペンキ塗りの仕事で何とか糊口をしのいでいる。そんなところへ、デイヴの幼なじみのマーティンが久しぶりに帰って来る….


ウィリアム・ワイラーが「孔雀夫人(1936年)」の翌年に発表した社会派ドラマ。

タイトルバックで最初にシルヴィア・シドニーとジョエル・マクリーの名前が現れるのだが、ドリナとデイヴの出番が圧倒的に多いという訳ではなく、特に前半で目立っているのはドリナの弟であるトミーを中心とする不良少年達と、数十年ぶりに生まれた街に舞い戻ってきたというギャングの“ベビー・フェイス”マーティン。

舞台となる地域というのが、裕福な人々の暮らす豪華マンションと貧しい人々の暮らす安アパートが通りを隔てて向かい合っているような場所であり、こういった貧富の格差や荒んだ社会環境がそこで暮らす貧しい子供たちに悪影響を及ぼし、その結果、マーティンのような犯罪者を生み出し続けているという当時の社会状況を告発する内容となっている。

このマーティンを演じているのは悪役ばかりを演じていた頃のハンフリー・ボガートであり、まあ、どう見ても“ベビー・フェイス”には見えない訳であるが、8人を殺害して警察から追われているマーティンは、顔を整形し、ジョンスンという変名を名乗っているという設定なので、ちゃんと辻褄は合っている。

一方、彼等とは対照的に、そんな社会環境に屈することなく貧しくも真面目に暮らしているのがドリナとデイヴであり、正直、ハンフリー・ボガートが演じているマーティンと比べると、ジョエル・マクリーの演じるデイヴの印象はどうしても弱くなってしまうのだが、本作のテーマからした場合、やはりこの点はマイナス要素と言わざるを得ないだろう。

ということで、あまり出番は多くないのだが、シルヴィア・シドニーがとてもキュートでむしろ現代的な印象だったのがちょっと意外。本作と同じ年に出演している「暗黒街の弾痕(1937年)」で見たときのイメージとは大違いで、彼女には明るくてハツラツとした役柄の方が似合うような気がしました。