1925年作品
監督 エルンスト・ルビッチ 出演 メイ・マカヴォイ、バート・ライテル
(あらすじ)
ロンドンに住むウィンダミア卿(バート・ライテル)あてにアーリン夫人という女性から一通の手紙が届く。実は、彼女は彼の妻であるマーガレット(メイ・マカヴォイ)の実の母であり、彼女を生んで間もなく、あるスキャンダルが原因で英国を離れ、これまで海外で生活を送っていたとのこと。母親は死んだものと教えられて育ったマーガレットに真実を告げるのを戸惑うウィンダミア卿は、アーリン夫人に口止め料として大金を渡すが….
エルンスト・ルビッチがオスカー・ワイルドの戯曲を映画化したサイレント作品。
ロンドンの社交界が舞台になっており、そこでの評価を得るために汲々とする当時の上流階級の人々の姿をアイルランド出身のワイルドが風刺的に描いている訳であるが、その描写を通して彼等にとって社交会がどんなに重要な意味を持っていたのかが良く分る。
サイレント映画ということで、登場人物の会話は字幕で表示される訳だけど、本作の場合、10行くらいの量の会話が字幕になると2、3行っていう感じかなあ、とにかく字幕による説明は極力少なくしようとする配慮がなされているようであり、残りの部分は俳優の表情や仕草から観客が勝手に想像しなければならない。
まあ、当時の社交界についてほとんど知識を有しないこともあって、最初のうちはちょっと戸惑ってしまうところもあるんだけど、そんな俺でも見ていれば次第に事情が飲み込めるようになっており、一度、登場人物たちの感情の動きを理解できるようになってしまえば、それからは何の問題もなく物語の世界にのめり込んでいける。
特に、この物語の実質的な主人公であるアーリン夫人は、一度失った社交会での地位を再び取り戻そうと画策する悪女的側面と、実の娘であるマーガレットをかつて自分が犯したのと同じ過ちから救おうとする母親的側面を併せ持った魅力的なキャラクターであり、ラストに近づくにつれ、彼女の心情が(字幕なしでも)手に取るように理解できてしまうあたりは、やっぱりルビッチの演出の上手さなんだろう。
ということで、20代前半と思われるマーガレットを除き、登場人物が全員立派な大人だけというのは、若者中心の今の映画ではちょっと考えられないような状況設定。そして、そのいい年をした男女が、社交会という舞台で日夜繰り広げられる不倫やゴシップに夢中になっている様は、もう、可笑しさというより、情けなさを感じてしまうところです。