1937年作品
監督 エルンスト・ルビッチ 出演 マレーネ・ディートリッヒ、ハーバート・マーシャル
(あらすじ)
お忍びで一人パリを訪れたマリア(マレーネ・ディートリッヒ)は、旧知のロシア大公妃の屋敷でアンソニー・ホルトンという英国人と知り合いになる。その後、レストランで夕食を共にした二人の恋のムードは高まるが、ホルトンがいくら名前を尋ねても、彼女は一向に教えようとせず、彼が目を離した隙に忽然と姿を消してしまう….
エルンスト・ルビッチが「青髭8人目の妻(1938年)」の前年に公開した作品。
実は、マリアにはバーカー卿(ハーバート・マーシャル)という夫があり、二人はロンドンで暮らしている。しかし、有名な外交官であるバーカー卿は仕事が忙しく、かまってもらえないマリアが浮気相手を探しにパリを訪れたというのが事の真相。
その後、バーカー卿とホルトンとが旧知の仲であったことが分かり、再会したホルトンをバーカー卿が自宅に招待したから、さあ、大変。そして、ここから三角関係をネタにしたドタバタ喜劇が展開するのかと思いきや、うーん、なんか普通の不倫話になってしまうんだよねえ。
こういうのを“ソフィスティケーテッド・コメディ”っていうのかもしれないが、洗練されていない俺にはこの三人の絡みのどのあたりが笑いどころなのか全然判らない。冒頭のパリでのシーン、マリアがホテルに偽名でチェックインしたり、怪しげなロシアからの亡命貴族が出てきたりするので、しばらくの間、俺はてっきりスパイ物だと勘違いしてしまった。
ようやくストーリーが理解できてからも、この主役の三人がいずれもいや〜な性格な人間ばかりであるが故、見ていてちっとも楽しくない。途中、バーカー卿の使用人役で、あのエドワード・エヴェレット・ホートンが登場してちょっとホッとするんだけど、彼もいつの間にか出てこなくなってしまう。
ということで、ディートリッヒは、先日見た「鎧なき騎士(1937年)」と同時期の作品ということで、とても奇麗に撮れているが、正直、彼女は偉(そう)過ぎてコメディにはあんまり向いていないんじゃないかと思う。まあ、彼女のファンであればこれでも許せるのかも知れないけど、俺はもっとストレートに笑える作品のほうが好みです。