ヘアスプレー

2007年作品
監督 アダム・シャンクマン 出演 ニッキー・ブロンスキー、ジョン・トラヴォルタ
(あらすじ)
1962年の米メリーランド州ボルチモア。おデブの女子高生トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)はダンスに夢中。人気のローカル・テレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」に出演し、憧れの同級生と踊ることを夢見ていたが、“太っていることはみっともない”と信じ込んでいる母エドナ(ジョン・トラヴォルタ)は、彼女がオーディションに参加することに大反対….


最近公開され、ちょっと話題になったミュージカル映画

TVの宣伝を見た限りでは、チビでおデブの女の子が歌って踊る、能天気な学園物ミュージカル映画という印象だったが、意外や意外、途中から黒人に対する人種差別の問題が大きく取り上げられていたので、ちょっと驚いた。

そうはいっても、本作で問題となっているのはあくまで“昔の人種差別”であり、それがイケないってことは最早常識。したがって、ここで描かれているようなエピソードを見て不快に思う人はアメリカ本国でも少ないものと思われ、このテーマが本作の明るく楽しい雰囲気を損なうことはない、っていうのはしっかり計算済みなんだろう。また、“黒人=ダンスや歌が上手い”という安易な描き方も、ちょっと気になる。

むしろ、本作の素晴らしいところは、人種差別だけでなく、チビやデブといったマイナーな人々一般に対する前向きなメッセージが感じられるところであり、デブの大女であることを恥じて自宅に引き籠っていたトレーシーの母エドナが、娘の励ましを受けて街に飛び出すあたりはちょっとした感動ものです。

まあ、冷静になって考えてみれば、あの母親に育てられたトレーシーが、自分の容姿に対して全くコンプレックスを抱いていないという設定には相当の無理が感じられるが、父親のウィルバー(=彼もデブ専のオタクという立派な小数派の一人)役のクリストファー・ウォーケンの怪演ぶりを見ていると、そこらへんに何か秘密があったのかも知れないと思えなくもない。

他の出演者では、特殊メイクによって母親役に挑戦しているジョン・トラヴォルタが話題であるが、俺としては、保守派の代表として悪役を一手に引き受けているミシェル・ファイファーの悪女ぶりがなかなか可愛らしく(?)、とても良かったと思う。残念ながら、デブ専のウィルバーには彼女の魅力も通じなかったけどね。

ということで、本作の舞台となったボルチモアについては、昔、Randy Newmanが“Man it's hard just to live”と歌っていたことが記憶に残っていたが、アメリカの中でも保守的な町として有名なのかもしれない。今度調べてみよう。