ドリーム

今日は、妻&娘と一緒に「ドリーム」を見てきた。

何とも陳腐なタイトルの作品であるが、その正体は昨年のアカデミー作品賞にノミネートされた「Hidden Figures」であり、気付かなかったらきっと見逃していたに違いない。毎度のことながら我が国の配給会社のダメさ加減には呆れ果てるばかりだが、「フェンス」や「最後の追跡」のように“未公開”にならなかっただけマシなのかなあと思いながら映画館へ向う。

さて、ストーリーは、米国のマーキュリー計画の成功に貢献した3人の黒人女性の奮闘ぶりを描いたものであり、多少の脚色はあるらしいが実話に基づいているとのこと。まあ、巨大プロジェクトということで、大勢の人間が関わっているは当然のことなのだが、そんな中で彼女たちが特に注目されるのはその置かれた環境があまりにも過酷なものだったから。

NASAといえば現代科学の最先端というイメージがあるのだが、彼女たちが働いていたラングレー研究所は“南部”のバージニア州に所在し、1960年代にはバリバリの人種分離政策が行われていた。それに加えて南部ならではの女性差別も深刻であり、彼女たちが自分の夢を叶えるためにはこの二重の差別と闘わなければならない。

それを象徴的に表現しているのがトイレのエピソードであり、白人男性ばかりの中で働くことになった主人公のキャサリンは、一番近くにある黒人用トイレに行くために片道800mの距離をハイヒールで走って行かなければならない。そんな彼女の姿を本作ではちょっぴりユーモラスに描いているのだが、本人にとってはとても笑い事ではなかっただろう。

そんなときに救いの手を差し伸べてくれたのが“数学にしか興味が無い”と言われている上司のアル・ハリソン(ケビン・コスナー)。彼の直接の狙いは、キャサリンのトイレに要する時間を短縮することによって仕事の効率化を図ることにあるのだが、それが“不合理な差別は社会の円滑化の阻害要因になっている”という事実の証明にもなっているところが面白い。

ということで、エンドロールでは彼女ら3人のその後の活躍ぶりが紹介されてとても爽やかな気分でハッピーエンド。トイレのエピソードからも分かるとおり、本作は深刻な問題をオブラートにくるんでしまっているところがあるのだが、まあ、差別の問題を家族そろって楽しみながら学ぶにはうってつけの作品と言えるでしょう。