1936年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ジャン・ギャバン、シャルル・ヴァネル
(あらすじ)
失業中のジャン(ジャン・ギャバン)は、アパートの家賃も払えないような貧乏暮らし。ある日、シャルル(シャルル・ヴァネル)、タンタン、マリオそしてジャックといった仲間達と一緒に買った宝くじが当選し、10万フランが彼等の懐に転がり込む。ジャンの提案によって、彼らはその金でレストランを開くことに決め、川のほとりに建つ廃屋の改装に取り掛かる….
デュヴィヴィエ特集の第5弾は、「地の果てを行く(1935年)」の翌年に公開された作品。昔、TVで一度見たことがあるので、だいたいのストーリーは判っていたが、再見してもやはりとても面白い。
5人の仲間の年齢は、20代後半から30代くらいといったところだろう。ジャン等4人はいずれも独身であり、唯一人の既婚者であるシャルルも妻と別居中(=どうも逃げられたらしい。)ということで、何の気兼ねもなく改装中の廃屋で共同生活を始める。そこへマリオの恋人のユゲットが毎日訪ねてきたりして、作品の前半はとても楽しそうな雰囲気なんだけど、そんな男の友情が次第に・・・っていう展開は、まあ、今では定番といったところかもしれない。
彼等の友情が崩壊していったのには様々な原因がある訳だが、俺にはひょうきん者のタンタンを事故で失ったのが意外と致命的だったように思える。彼は、「七人の侍(1954年)」で千秋実が演じた平八のように、人間関係の緩衝材としてとても重要な存在であり、彼の死がなければ、その後の展開ももっと違ったものになっていたんじゃないだろうか。
実は、今回購入したDVDには悲劇的なラストの「本邦公開版」とハッピーエンドの「本邦未公開版」の2つのバージョンが入っている。普通に再生すると最初に「本邦公開版」が見られるようになっているため、最初にそちらを見た後で「本邦未公開版」のほうも見てみた訳だが、まあ、内容的にはどちらも一長一短といったところ。ただし、「本邦公開版」のほうではラストの展開がやや強引であり、あそこでジャンが拳銃を持っていた理由がちょっと理解不能なので、俺としては「本邦未公開版」のほうに軍配を上げたい。
ということで、本作は登場する男たちの“純粋さ”や“子供っぽさ”が強調されたようなストーリーになっており、それが悲劇の原因であるとともに、大きな作品的魅力にもなっていることも間違いない。彼等のように純粋でも子供っぽくもない俺としては、まあ、ちょっと羨ましく思えるところもない訳ではないですな。