ウイークエンド

1967年作品
監督 ジャン=リュック・ゴダール 出演 ミレーユ・ダルクジャン・ヤンヌ
(あらすじ)
パリ在住のロラン(ジャン・ヤンヌ)とコリンヌ(ミレーユ・ダルク)は、共に不倫相手がいるという愛の冷め切った夫婦。ある週末のこと、二人はコリンヌの実家があるパリ郊外のワンヴィルまでドライブに出掛けることになるが、出発早々、隣家の車と接触事故を起こし、それが原因で大喧嘩になってしまう。その場は何とか切り抜けたものの、その後、延々と続く車の渋滞に巻き込まれた二人は….


ジャン=リュック・ゴダール37歳のときに公開された不条理劇。

ロランとコリンヌの夫婦生活自体、最初から相当荒んだものという印象があるのだが、その延々と続く渋滞を抜けた先にあるのは社会的秩序が完全に失われた世界であり、そこではあらゆる人間関係は破綻し、道端には自動車事故の犠牲となった人々の遺体が血だらけの無残な姿のまま点々と放置されている。

実は、彼等がコリンヌの実家を訪れる目的は、彼女の親を殺害してその遺産を手に入れようというものであり、終いには奇妙なテロリスト集団まで登場するというそのアナーキーな世界は、そんな彼等の心象風景の具現化なのかもしれないのだが、そこはゴダールということで、説明的なシーンは全く無いため、正直のところ良く分からない。

中でも最も印象的なのは、その悪夢のような世界への入り口となる渋滞のシーンであり、延々と続く自動車の列をこの二人が無理やり追い越していくところは、一般的な庶民から生き急ぎの犯罪者へと変貌を遂げていく彼等の姿を表現しているようであり、映像的にもとても面白かった。

これに対し、ラストの、彼等がテロリスト集団に拉致されるというエピソードは、取って付けたようなわざとらしさが鼻に付く精彩を欠いた内容であり、豚の屠殺やカニバリズムといったショッキングなシーンはいくらでも出てくるものの、それらがエピソード自体の内容の無さをごまかすためだけに採用されたように思えてしまい、素直に楽しめない。

ということで、allcinemaによると、ゴダールはこの1967年だけで本作を含む5本の映画を発表しており、うち4本では脚本も担当している。まあ、他の作品は一本も見ていないので断定的なことは言えないが、そのような状況下でどのくらい脚本を練り上げることが出来たのか、ちょっと疑問に思ってしまいます。