河童のクゥと夏休み

2007年作品
監督 原恵一
(あらすじ)
東京の郊外に住む小学生の上原康一は、両親と妹の4人家族。学校からの帰り道、偶然躓いた不思議な石を掘り返し、家に持ち帰って水で洗っていると、なんとその石から河童の子どもが姿を現わした。康一の世話によって元気を取り戻した河童は、その鳴き声から“クゥ”と名付けられ、世間に知られないように注意しながら、上原家の人々と一緒に暮し始めることになった….


クレヨンしんちゃん」シリーズで有名な原恵一監督の新作アニメ。

クゥは、江戸時代に地中に生き埋めになってしまったという設定であり、ちょっと言い回しは古めかしいが、れっきとした日本語を話し、上原家の人々とのコミュニケーションには特に問題はない。しかし、康一と一緒に岩手県の遠野まで自分の仲間を探しに出かけるものの、結局、河童は見つからず、彼の孤独感は最後まで癒されない。

本作の設定から、最初は自然保護(=無難)がテーマの作品なのかと思ったが、実はイジメの問題(=深刻)が大きく取り上げられており、このへんに原監督の良心が感じられる。康一の同級生の女の子や上原家の飼い犬の元飼い主といったイジメの被害者が登場するほか、途中から康一までもが友人から仲間ハズレにされてしまう。

しかし、究極の仲間ハズレの被害者はクゥ自身な訳であり、ある事件がキッカケで上原家の人々への信頼感が揺らいだ彼が東京タワーの上から身を投げようとするシーンは、それがラストシーンになるのかと思う程のせつなさであるが、そこでクゥに自殺を思いとどませたあたりに原監督のメッセージが込められているんだろう。

正直、その後の展開については切れ味がいま一つといった印象が強く、138分という上映時間をちょっと長く感じさせる原因になっている訳だが、新しい環境の中で十分に休養を取ったクゥが、再び仲間探しの旅に挑戦できるようにという願いが込められたラストシーンは、まあ、決して後味の悪いものではない。

ということで、家族構成から考えたら、上原家ではなく、野原家を舞台にしても良かったのかもしれず、そうしたら「アッパレ! 戦国大合戦」以上の異色作になっていたことでしょう。