ゴルゴダの丘

1935年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ロベール・ル・ヴィギャン、ジャン・ギャバン
(あらすじ)
神の子と呼ばれるイエス(ロベール・ル・ヴィギャン)が町にやって来るという知らせに、彼の行う奇跡を一目見ようと多くの群集がエルサレムに集まってきた。塔の上からその様子を見ていたユダヤ教の大司祭カヤパは、自分たちの権威を認めようとしないイエスの影響力を恐れ、ローマから派遣されている大守ピラト(ジャン・ギャバン)を利用して彼を死罪にしようと企てる….


ちょっと間があいてしまったが、デュヴィヴィエ特集の第4弾。

内容は、その題名のとおり、エルサレムにやって来たイエスが陰謀によってゴルゴダの丘で十字架にかけられ、三日後に復活するまでを描いている。この間、最後の晩餐やユダの裏切りといった有名なエピソードもきちんと紹介されており、おそらく聖書の記述を結構忠実に映画化したんじゃないかと思う。

なかでも、イエスを熱狂的な声援で迎えたエルサレムの人々が、彼等に奇跡を披露しようとしないイエスに失望し、ゴルゴダの丘に曳かれていく彼に罵詈雑言を投げかける様がとても印象的に描かれており、ユダヤ教の司祭たちの策謀に乗せられたということがあるにしても、ユダヤの民の“罪深さ”が見ている方に強烈に伝わってくる。

これに対し、ローマ人の大守ピラトはいたって理性的なキャラクターとして描かれており、イエスには死罪に当たるような罪はないという彼の主張を、エルサレムの人々が無理やり翻させたような内容になっている。

まあ、この辺りには、ユダヤ教と異なり、ローマという時の権力との対立をできるだけ避けようとしたキリスト教の立場が反映されている訳だろうが、ユダヤの民の罪深さがあまりにも強調されているため、本作公開の数年後から始まったというホロコーストとの関係がちょっと気になった。

ということで、有名な「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」という言葉が発せられた背景とか、ゴルゴダの丘でイエスと一緒に十字架にかけられた罪人が彼とは全く無関係の人々だったことがわかるなど、我々異教徒にはとても勉強になる。まあ、デュヴィヴィエらしさはあまり感じられず、何度も見たくなるような映画ではないが、後半部分のスペクタクル感はなかなか見ごたえもあり、キリスト教初心者向け教育用映画としては良く出来た作品だと思います。