2006年作品
監督 クリス・クラウス 出演 モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング
(あらすじ)
刑務所で受刑者たちにピアノを教えている老教師のクリューガー(モニカ・ブライブトロイ)は、そこで天才的な才能の持ち主であるジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)に出会う。クリューガーは彼女をピアノ・コンテストに出場させようと厳しいレッスンを続けるが、反抗的な彼女はクリューガーをはじめ誰にも心を開こうとしなかった….
昨年、一部でちょっと話題になったドイツ映画。
ピアノ教師のクリューガーは、ナチス時代、あのフルトヴェングラーの愛弟子だったという程の将来を嘱望された名ピアニストであったが、若くしてあるスキャンダルに巻き込まれてしまって以降、長年、刑務所の中で世間から隠れるように生きてきた、という設定。
本作は、クリューガー&ジェニーの師弟コンビによるピアノ・コンテストへの挑戦という、普通に考えれば割とストレートなテーマをメインに、クリューガーの秘められた過去の種明かしを絡めながら進展していく訳であり、まあ、この素材を素直に料理してくれていれば黙っていてもそれなりの感動作になっていたに違いない。
しかし、これが監督第二作目で脚本も担当しているクリス・クラウスは、おそらく故意にだと思うんだけど、素直な感動を求める観客(=俺を含む。)が期待するお約束的な展開を悉くはぐらかすことによって、本作を単純な感動作に仕立て上げることを頑なに拒否してしまっている。
登場人物たちにしても、一見するとお互いに本音をぶつけ合っているかのように見えるものの、彼等の真意は最後まで完全には理解できないまんまであり、見終わってからの印象もなんとも微妙なところ。宙ぶらりんのまま取り残されたような気分で、何ともスッキリさせてもらえない。
ということで、本作がハリウッドで製作されていたらなかなか面白い作品になっていたんじゃないかと、つい思ってしまわないでもないが、このクラウス監督の演出力なんかはそれなりに魅力的。本作も決して成功作とは思はないが、こういった消化不良気味の作品の方が長く記憶に残ってしまうというのも事実であり、まあ、今後のご活躍に期待させて頂くことに致しましょう。