アギーレ/神の怒り

1972年作品
監督 ヴェルナー・ヘルツォーク 出演 クラウス・キンスキー、ヘレナ・ロホ
(あらすじ)
1560年末、スペイン人のピサロは、伝説の黄金郷エル・ドラドを発見するため大軍を率いてアマゾン奥地に踏み入るが、行軍は困難を極め、40人の分遣隊を残して撤退することを決意。分遣隊の隊長を任されたウルスアは、副官のアギーレ(クラウス・キンスキー)等と共に三隻の筏に乗って旅を続けるが、そのうち渦に巻き込まれて立ち往生していた一隻がインディオの襲撃を受けて全滅してしまう….


ヴェルナー・ヘルツォークがクラウス・キンスキーを主役に起用した初めての作品。

冒頭に登場するアンデス山脈の断崖絶壁に付けられた粗末な山道は、片側が大きく切れ落ちており、ちょっとでも足を踏み外したら奈落の底に真っ逆さま。そんなところを、ピサロに率いられたスペイン軍の兵士たちが蟻のように連なって行軍するという本作のオープニング・シーンの衝撃は圧倒的。

ただでさえ危険なルートを、重い鎧を身に着け、または馬を連れて進んでいく様子は正に命がけであり、演じている俳優さんの表情も引きつっているように見えてしまう。先日拝見した「フィツカラルド(1982年)」で見せてくれた“舟を山越えさせる”シーンも凄かったが、この大軍の山越えシーンもそれに引けを取らないほどの大迫力だった。

平地に降り立ってからも、アマゾンのジャングルの中をヨーロッパ風の装備に身を固めたスペイン兵が進んでいくという映像の放つ“違和感”は強烈であり、それが自然の摂理に反する誤った行動であることを如実に物語っている。

その後、分遣隊が組織され、インディオの襲撃に弱気になったウルスアに対して副官のアギーレが反旗を翻すあたりまではとても面白いのだが、どういう訳か、その後急速にパワーダウン。なかなか全貌を現さないインディオの存在は不気味だが、攻撃が弓矢や投げ槍ばかりではあまり絵にならない。上映時間も93分とこの手の作品にしては短いのだが、ひょっとすると冒頭のシーンにお金を使いすぎて、最後の方は予算が足りなくなってしまったのかもしれないなあ。

ということで、ちょっぴり“竜頭蛇尾”という言葉が脳裏をよぎってしまうのだが、序盤の悪夢のようなシーンの連続はとても印象的であり、当分の間、頭にこびりついて離れそうにない。クラウス・キンスキーをはじめとする出演者の皆さんには、心から敬意を表すると共にご苦労様と言わせていただきます。