1945年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 バージェス・メレディス、ロバート・ミッチャム
(あらすじ)
第二次世界大戦末期の北アフリカ戦線。従軍記者のアーニー・パイル(バージェス・メレディス)は、ウォーカー中尉(ロバート・ミッチャム)の指揮する中隊と共に最前線のカッセリネ峠へと向かうが、そこでドイツ軍の激しい反撃に遭い、隊は退却を余儀なくされる。その後も中隊は転戦を続け、アーニーはイタリア戦線で彼等と再会する….
ウィリアム・A.ウェルマンが「西部の王者(1944年)」の翌年に公開した作品。
アフリカの地で初めて実際の戦闘を経験した新兵たちが、その後の厳しい実戦を通して逞しい兵士へと成長していく、っていうのが本作のメインテーマであり、時節柄、製作側には戦意高揚的な意図があったのかもしれない。しかし、ウェルマン監督はそれをとても淡々としたタッチで描いており、兵士たちの厭戦感みたいなものもきちんと伝わってくる。
本作の狂言回し的存在である従軍記者のアーニー・パイルというのは実在の人物であり、本作は彼の書いたルポルタージュをベースにしているそうである。また、作中では実戦の記録フィルムと思われる映像も使用されているため、ドキュメンタリー作品のような雰囲気さえ漂っている。
一方、中隊長のウォーカー中尉(=後に大尉に昇進している。)を演じているのは、デビュー間もない頃のロバート・ミッチャムであるが、公開当時28歳という若さにもかかわらず、厳しさと優しさを兼ね備え、部下からも慕われる上官役を見事に演じており、彼はこの作品で初めてのアカデミー助演賞候補になっている。
なお、本作のクライマックスになるモンテ・カッシーノの戦いは、1944年1月から5月にかけて実際に行われた戦闘であり、その際に歴史的建造物であるモンテ・カッシーノ修道院が爆破されたというのも史実どおりとのこと。ただし、本作では爆撃の理由を、その修道院がドイツ軍砲兵の観測所として利用されているからとしているが、後日の検証によるとその様な事実は確認されなかったらしい。
ということで、先日の「中共脱出(1955年)」があまりにも酷い出来だった故、本作を見るに当たっても一抹の不安を覚えないではなかったが、幸いなことにその10年前のウェルマン監督はいつもどおりの冷静な彼であった。この後の10年間にどのような心境の変化があったのかは依然として不明であるが、とりあえず、次は「戦場(1949年)」を見てみることにします。