1937年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 ジャネット・ゲイナー、フレデリック・マーチ
(あらすじ)
山奥の寒村に生まれ育ったエスター・ブロジェット(ジャネット・ゲイナー)は、開拓者であった祖母に勇気づけられ、映画スターになる志を抱いて夢のハリウッドへとやって来る。しかし、大勢の俳優の卵たちが押し寄せるハリウッドでは、エキストラの口さえ回ってこない有様。生活費を稼ぐためにある映画関係者のパーティのメイドとして雇われた彼女は、そこで大スターのノーマン・メイン(フレデリック・マーチ)と出会う….
ジュディ・ガーランド主演のミュージカル「スタア誕生(1954年)」のオリジナル。
オリジナル版の方はミュージカルではないんだけれど、ストーリー的には54年版とほとんど同じであり、ラストの “This is Mrs. Norman Maine.”という名セリフもちゃんとあった。一番の大きな違いは、こちらではエスターの祖母が登場し、最初と最後で結構重要な役割を果たすところであるが、まあ、これに関しては別になくても支障はないか。
製作がデイヴィッド・O.セルズニックということで、1937年の作品にもかかわらず美しいテクニカラー映画であり、今見ても全く古びていない。そのせいもあって、ついつい54年版と出来を比べてしまう訳であるが、個人的には甲乙つけがたいというのが正直な感想であり、いや、それくらい本作も良く出来ている。
主演のジャネット・ゲイナーは本作公開当時31歳であり、小柄かつ童顔のせいで歳よりは若く見えるものの、さすがに「第七天国(1927年)」の頃の天使のような初々しさは残されていない。そのため、パーティ会場で出会ったノーマン・メインが彼女のどこに秘められたスター性を見出したのか、少々理解に苦しむところであるが、まあ、その後の彼との結婚生活を描く上ではこのくらいの歳の方が逆に違和感は少ない。
また、相手役のフレデリック・マーチがとても素晴らしく、54年版で名優ジェームズ・メイソンが扮したノーマン・メインを見事に演じている。実を言うと、54年版を見たときにノーマン・メインが最初から悲壮感を漂わせているあたりが気になったんだけど、本作での彼はもっと軽〜い感じであり、それだからこそあの自殺を決意するシーンがより印象的になっている。
ということで、これまでウィリアム・A.ウェルマンの監督作品を集中的に見てきた訳であるが、残念ながら、現在のところ国内で容易に入手できる彼のDVD作品はこれが最後。しかし、彼の戦前の作品に関しては、本作を含めてまだ3作しか見ていないような状況であり、関係者各位にはこれらの作品のDVD化を是非ともお願いしたいところです。