イノセント・ボイス 12歳の戦場

2004年作品
監督 ルイス・マンドーキ 出演 カルロス・パディジャ、レオノア・ヴァレラ
(あらすじ)
1980年代のエルサルバドル。そこではアメリカ軍の支援を受けた政府軍と、貧しい農民を中心に組織された反政府ゲリラによる激しい内戦が繰り広げられていた。11歳の少年チャバ(カルロス・パディジャ)は、父親が家族を置いてアメリカに亡命してしまった後、母親のケラ(レオノア・ヴァレラ)を助けてたくましく生きていたが、そんな彼にさらなる過酷な運命が迫っていた….


1980年代のエルサルバドルを舞台にした実話の映画化。

冒頭、激しい雨の中、少年達が銃を持った兵士に連行されていくという悲惨なシーンから始まるので、思わず見るのを止めようかと思ったのだが、まあ、今現在も戦禍に怯えているであろうガザの子供たちに対するせめてもの罪滅ぼし(?)という気持ちで、なんとか最後まで見続けた。

最初のシーンの後、場面はその数か月前の出来事へと切り替わり、そこではチャバの家庭生活や友達と元気に遊び回るシーンなんかが描かれる訳なんだけど、それと同時に、彼の家庭や学校が政府軍とゲリラ(FMLN)による市街戦に巻き込まれる様が怖ろしい程の緊迫感を持って描かれている。

何しろ、表で数発の銃声がしたかと思うと、その直後、今まで家族で食事をしていたキッチンの中にまで銃弾が飛び込んでくるという、到底信じられないような境遇で生活している訳であり、彼等がいつその犠牲になって全くおかしくない。そして、無事12歳になった男の子には徴兵というもう一つの現実が待っている、というのはいったい何という皮肉なんだろう。

このチャバ少年を演じているカルロス・パディジャ君は、一般のオーデションで選ばれたらしいんだが、とても今の平和な暮らししか知らない現代っ子とは思えない迫真の演技を見せており、主役の重責を十分に果たしている。また、その母親役に扮したレオノア・ヴァレラが見せる、子供たちへの愛情と不安感&無力感とが一緒くたになったような表情もとても印象的。

ということで、本作で描かれている内戦は1992年に国際連合の仲介によって終結し、FMLNも現在は合法政党として活動しているらしい。しかし、本作の最後に入るクレジットによると、現在でも世界中で30万人の子供達が兵士として戦場へ送られているとのことであり、残念ながら問題の解決はまだまだ先のようです。