デイヴィッド・コパフィールド

実は、ドストエフスキーだけでなく、ディケンズもちゃんと読んだことが無かったもんで、せっかくだからということで、やはり長編(=岩波文庫で全5巻)の「デイヴィッド・コパフィールド」を読んでみた。

例によって本作のテーマが何なのか分らないまま、様々な登場人物が登場してくる訳で、いやー、昔の人って忍耐力が強かったんだなあと思いつつも、なかなかページが先に進まない。まあ、興味深いエピソードもいくつか出てくるんだけど、やっぱりいま一つ作品の世界に入り込めないっていう感じ。そして、ようやく悪漢ユライア・ヒープがその本性を現す第3巻あたりから面白くなってきて、あとは一気にラストまで読むことができた。

まあ、“誠実に生きていればきっといつかは報われる”みたいな当時の中産階級の人々に受け入れやすい結論だった訳だが、デイヴィッドの母親の早すぎる死の原因を作ったマードストン姉弟が最後まで何のお咎めもなしっていうあたりはかなり不満で、これがTVの「水戸黄門」であれば、視聴者から苦情の山が届いていたと思う。

それと問題のユライア・ヒープであるが、今よりもさらに階級社会的傾向が強かったであろう当時の英国においては、彼の様な上昇志向の強い若者は世間から煙たがれる存在だったのかもしれないね。その容姿や言動が最初っから否定的に描かれているあたりに当時の価値観が窺われるような気がした。

ということで、そいうえば70年代に「ユーライア・ヒープ」っていう名前のヘヴィー・ロック・バンドがいて、「対自核」なんていう意味不明の曲をヒットさせていた訳なんだけど、彼等のバンド名はここから取られていたんだなあ。