また逢う日まで

1950年作品
監督 今井正 出演 岡田英次久我美子
(あらすじ)
昭和18年の日本は戦争の真っ只中。大学生の田島三郎(岡田英次)は、空襲警報を聞いて飛び込んだ防空壕の中で一人の美しい女性に魅せられる。その後、街で偶然に再会した彼女は小野蛍子(久我美子)という画家の卵であり、二人は急速に恋に落ちる。三郎がいつ戦争に招集されるかわからないという不安を抱えながら、二人は束の間の青春の日々を楽しもうとするが、そんな彼等に対する世間の目は厳しく….


“ガラス越しの接吻シーン”があまりにも有名な作品。

お二人が最初に出会うシチュエーションがヴィヴィアン・リーの「哀愁(1940年)」にそっくりなので、こっちでもせつなくもロマンチックな恋物語を堪能させてもらえるのかと思ったら、そこは社会派で知られる今井正監督、当時の若者の厭戦感みたいなものをしっかり描いており、結構真面目な反戦映画にもなっている。

しかし、主役のお二人があまり貧乏くさくならないような配慮も十分なされており、法務官の息子である三郎のほうはともかく、貧しい母子家庭であるはずの蛍子の家もどことなく洋風な雰囲気で、鎧窓というのだろうか、窓に扉なんかが付いていたりする。まあ、こういった配慮は、個人的には大歓迎なのですが。

主演の久我美子は公開当時19歳で、「雪夫人絵図(1950年)」と同時期の作品になる訳だが、洋風なイメージが強調されている分、こっちのほうが美人に撮れている。彼女の顔はカメラアングルによるとちょっとフケ顔に写ることがあるんだけど、幸い本作ではほとんど気にならなかった。

一方の岡田英次は、なんと公開当時30歳。これで大学生役をやれといわれっても自然な演技ができる筈もなかったためか、力が入り過ぎでちょっとクサくなってしまったのが残念。また、三郎の義姉役で出ている若き日の風見章子がちょっと意外なほどの美人であり、出番は多くないものの、蛍子とは対照的な古風な役柄を好演していた。

ということで、噂の“ガラス越しの接吻シーン”はやはりとってもせつなくて文句なしの名シーンだった訳であるが、実は、この後、このお二人による生の(?)接吻シーンが2度程登場するんだよね。まあ、若い二人なのでそのほうが自然なんだろうけど、なんかちょっと騙されたような気がしないでもありませんでした。