天然コケッコー

2007年作品
監督 山下敦弘 出演 夏帆岡田将生
(あらすじ)
小中学生合わせて生徒数6人という田舎の分校に通う右田そよ(夏帆)は中学2年生。一番年上ということもあって、幼い小学生の面倒を見ながら“家庭的な雰囲気”で楽しく、気楽な学校生活を送っていた。そんなところへ、同じ中学2年生の大沢広海(岡田将生)が東京から引っ越してくることになり….


キネマ旬報2007年度日本映画ベスト・テンの第2位に輝く作品。漫画が原作らしいという中途半端な予備知識と題名のイメージから、コメディだと思って見てみたのだが、実際のところはほのぼのとした雰囲気の割とマジメな青春映画だった。

6人の全校生徒のうち男子は主人公の弟一人だけ、という状況のところへ突如同級生の男の子(=しかもイケメン)が登場したことから、他に選択の余地もない彼女は半ば必然的に彼との初恋モードへと突入することになる。そんな主人公の中学2年の夏から卒業するまでの約1年半における日常生活が、ロケ地である島根県の自然をバックにのんびりとしたペースで描かれている。

初めの方で子供達が歩いて海水浴へ行くっていうエピソードが紹介され、ここでは彼等が家を出発してから海に着くまでの間について、相当の時間をかけて丹念に描かれている。しかし、途中でちょっと思わせぶりな出来事が起こるものの、結局、それが何か別のエピソードの伏線になるという訳でもなく、まあ、冗長とは言わないにしても、これ以後もそんな具合にストーリーは淡々と進んでいく。

それと、主人公が(学年は変わっても)成長しないっていうのも本作の特徴的なところ。例えば、お祭りに出かけた主人公が気を利かせたつもりの他の子供たちから置いてけぼりを食い、一人涙を流すっていう印象的なシーンがあり、俺はてっきりここから主人公の“少女期の終わり”の方向へとストーリーが展開するのかと思っていたんだけど、あにはからんや、泣き出した主人公を他の子供たちが迎えに来てくれ、事態は元の状態へと収束してしまう。

ということで、ラストでも主人公の“失恋”の危機は見事に回避され、こんな感じで描かれる「ちびまる子ちゃん」的な“終わりなき日常の安心感”を、映画として肯定的に受け入れるか否かっていうあたりで、本作に対する評価が変わってくるような気がする。まあ、個人的にはこういったストーリーも決して嫌いではないけど、2時間を超える上映時間の方はもうちょっと短くして欲しかったところです。