フィレンツェ

最早、ファンになったといっても良い高階秀爾氏の本。

「初期ルネサンス美術の運命」という副題のとおり、1400年代(=クヮトロチェントロというらしい。)におけるフィレンツェがテーマ。前半でメディチ家や修道士ジロラモ・サヴォナローラ等が活躍する当時の政治・社会情勢を簡潔に紹介し、その後から建築家ブルネレスキ、彫刻家ドナテルロ、画家マサッチオといったルネサンス初期の芸術家たちの活動を描いている。

フィレンツェから始まったルネサンスが、そこを離れ、ヴェネチアやローマにおいて発展したのは何故か”というのが作者の問題意識であり、これに関し、いつもながらの説得力のある文章で氏自身の考えが述べられている。いや、それがあまりに論旨明快すぎるため、例証主義なんじゃないかと思わず勘ぐってしまう程であるが、まあ、その点は読む人が気をつければ良いことでしょう。

ということで、サン・ジョヴァンニ洗礼堂の門扉製作者を決めるコンクールでギベルティに敗れ、建築家に転身してドゥオモのクーポラを設計したというブルネレスキが本作での一番のお気に入り。是非、もう一度フィレンツェを訪れ、彼が手がけたという数々の建築物を見てみたいものです。